3Dプリンティングでブラジル国立博物館の焼失した収蔵品を復旧するというお話

 今年9月に全焼したブラジル国立博物館のことは今も記憶に新しい*1。その失われた収蔵品を、残されていた3Dデータから3Dプリンタで復活させようというお話。

 収蔵品の9割がたは消失してしまったものの、ブラジルのNational Institute of Technologyhatebuが、過去18年間にわたって収集していた300点に及ぶ稀少収蔵品の3Dデータを3Dプリンティング技術で復旧しようとしているとかなんとか。

 残されたデータはそれほど多くの収蔵品にわたったわけではなかったようだし、表面の彩色や質感の再現についての言及もないようだ。けれど、なるほど3Dプリンティングの技術はこうした方面にも活用可能なものだったのだな、ということを気づかせてくれる話題ではある。

 

 そういえば、日本でも唐招提寺の鑑真和上坐像のお身代わりがある。こちらはかつての制作方法を出来る限り忠実に用いたとのことだけれど、制作に先立って厳密な3Dデータが採られるものだった*2。結果としてお身代わり像、手取り早く云えばレプリカ像の仕上がりは、知らずに見ればそうとはわからない、本物そのものと見えるものになっている。

 現在では、単にデータを採るばかりではなく、仏像のレプリカ制作にも3Dプリンティングが用いられるケースも複数出て来ているようだ*4

 実際のところ、仏像の類であれ、博物館の収蔵品であれ、一般人には触れることの許されないものであるわけで、拝んだり眺めたりするに充分なホンモノを感じさせてくれさえすれば展示には事足りると云えなくもないわけで、形状の他に彩色や質感が再現されればそれで良し、なのかもしれない。

 

 そういうことを考えると、これまでのレプリカ技術をより精緻により安価に進展させるものとしての3Dプリンティングの用途について、あれこれ考えるべきことも出て来るんだろう。「複製芸術の時代2.0」みたいなあれこれ。