字数制限がある場所でのライティング法/少し硬い場面での小技

 「字数制限がある場所でのライティング法」(LivedoorディレクターBlog)が、限られたスペースの中、読み手を惹くキャッチーな言葉を組み立てるために必要な工夫を紹介してくれている。約物*1の変則的な使用、内容を秘匿して閲覧者の関心を惹くなど、通常の実用文作法では語られることの少ない表現の工夫として興味深い。

 けれど、紹介されている工夫は、少数の例外を除けば入学試験や就職試験の際には用いにくいものだろう。というわけで、少し硬い表現が必要になる場合の表現短縮のコツとして、もっとも使いやすいものを紹介してみよう。用言の体言化だ。用言は動詞・形容詞・形容動詞・助動詞のような活用語尾を持つ語を、体言は名詞をそれぞれ指す言葉。

 たとえば、

 このプロジェクトチームが目指しているのは、新しい製品を開発することである。

という一文を短くしてみよう。

 このプロジェクトチームが目指しているのは、新しい製品を開発することである。

 それぞれピンクの部分が用言になっている。これを名詞に改めてみよう。もちろん、ただ機械的に用言を体言にするというだけでなく、前後の助詞など適宜改める必要が出てくる。そういうところも合わせて調整すると、

 このプロジェクトチームの目標は、新製品の開発である。

というふうになる。もともとの文だってそう長いものではない。それでも短縮した文は元のものより10字ばかり短くなっている。

 元の表現が充分に体言化されたものである場合には使えない。でも書き慣れない人は、用言の多い文章を書いていることが多いものだ。覚えておくと役立つ折もあるのではないかと思う。

 稀に受験用の参考書に、「こと」「とき」などを「事」「時」と表記を改めることで字数を節約すればいいといった「テクニック」が登場している。しかし、些細なことではあるけれど、「どういうことか説明せよ」と問われたら「〜ということ」と答えるのは形式的な対応からのルールだと考えるべきだろう。その程度のことで減点するのは馬鹿げているとも思えるが、現実に入試などでは、「〜ということ」と書くべきところを「〜という事」と表記すると、誤字に準ずる扱いを受けるケースもそれなりにあるらしい。だから、コイツは「テクニック」などと称されるべきものではない。

 用言の体言化も、やりすぎれば文面を硬くしてしまうという弊害がある。書く文章の目的をよく考えて、何でもかでも体言化しちゃうなんていう愚は避けなきゃいけない。そのへんの勘違いさえなければ便利なもんじゃないかと思うけれど、どうかしら?

 

句読点、記号・符号活用辞典。

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