ついさっきうとうとしていて見た夢のメモ。
気配があって振り返ると、匂いがあるようなないような突然の風圧。一気にこちらに迫ってきて、身体は壁に押しつけられ貼りついてしまう。気圧されて閉じてしまった目を薄っすらと開き始めると、つい先ほどまで自室にいたつもりなのに、そこは小学校の講堂だなと、まだ何も見えないうちからわかったような気になる。瞼の内側には、体操器具と丸められたマットがくっきりと浮かび上がる。あぁ、ではあの匂いらしきものは、あの古い講堂の周辺の、埃と黴の胞子が入り混じったようなあれだったのだろうか。ところが、気持ちを落ち着かせながら目を見開けば、そんなものは何も見えず、ほんの数メートル先、波打つような黒と灰色の濃淡のグラデーションの縞模様、粘膜状の壁面が視野を占めている。その一面にに、とろりとろり茶色い液体がゆっくり流れ落ちるのが見える。濃い砂糖醤油のような液体の流れにははっきりとした濃淡のむらがあって、触ったら最後鳥餅のように粘々とこちらの身体を絡め取られそうな不吉な気配がする*1。これはまずいことになりそうだ、と、どこのだかよくわからない背中側の壁に沿って、横へ横へと身体をずらして移動する*2。茶色い液体は目の前の粘膜壁面から流れ落ちて足下に迫ってくる。これは大変なことになりつつあるぞ、急がねばと、移動の足取りを速めようとする。しかし、足は思うように動かない。その間、何度となくこちらに呼びかける声を聴く*3。――***」というのはしかし私の名前ではない。私の名前ではないのだが呼ばれているのはたしかに私だとわかる。なぜだ? ……どれくらい移動し続けたのか、ようやく粘膜壁面に遮られていた視野が開け始める。開け始めた方向に、動いているのだか動いていないのだかよくわからない足をジタバタさせて逃げ始める。少しずつだが身体は移動して、募る苛立ちの内にもわずかに安堵の心が動く。これなら大丈夫と振り返ってみれば、タルコフスキーの『ノスタルジア』の終盤に出て来たような大聖堂の廃墟の真ん中に巨大な鰻の頭が上を向いて立っている。そして、口をはぐはぐと開閉し、輪郭の曖昧なぶるぶる震える目玉でまっすぐにこちらを見つめているのだった。
そこからあとは覚えていない。今年はまだ鰻を喰ってなかったからなぁ。うーん。鰻の祟りだな、この夢は。
他にブルーレイ版その他あり。