目覚めに抗う悲しい夢

20090907234331

※ 写真は、本文中の天祖神社とは関係ありません。

 太鼓と笛の音……あぁ、そういえば今日は天祖神社の祭なのだな、とどこかで醒めた意識が働いている。このままだと目が醒めてしまう、もう少し静かにやってもらえないものなのかと気持ちが動いている。

 曇天、なんだろうな、陽射しの感じられない薄明るい河原の(はず)なのだけれど、橋は見えても川は見えない草原が目の前に広がっている。何年か前に南千住だったか池袋だったかの立ち呑み屋で一度きり話をした記憶のある60半ば過ぎくらいか、年輩のおっさん2人が、何かはっきり思い出せない独特のポーズで――たぶん腕の組み方絡ませ方がおかしかったのだと思うのだが、どう説明していいのかよくわからない――、向かい合っている。また娘の「不純異性交遊」――これは実際におっさんの一人が立ち呑み屋で実際に口にしていた言葉。あぁ今でもこういう言葉を使うヒトがいるのだと思ったのだった――について口論している様子。

――お前はどうせ柳田國男など読んだことがないんだろう。
……
――製塩都市の特徴から考えるべきなんだ。
……
……
――うなぎの骨の唐揚げ。
……
――砂糖が腐るかどうか、お前、知ってるか?
――腐らん!

 断片的に聴こえてくる言葉はそんなふうに当てどもとりとめもないものなのだが、どういうわけなのかそれは明らかに娘の「不純異性交遊」の問題を論じ合っているというふうに感じられる。

 おっさんたちのすぐ脇には、描きかけのキャンバスが折畳みイーゼルにかけてある。あぁ、これは*****のじゃないか。*****も近くにいるのか。こういうおっさんたちの議論に付き合うのはもうすっかり飽きた。*****も早くここに現れないかしら。またこんなに青い顔の肖像ばかり描いて、なぜこんなに不健康な顔ばかりが笑っているのか。どうせまた………………なのだろうに。

 そうこうしているうちに、――テンソぉジンジャではコンヤ7ジから……を行いますぅ。…………おみやげもございますのでぇ……」とうつつの声が割り込んでくる。待ってくれ、もう少しで*****が現れるところなんだから。*****にはまだ話しておかなければならないことがあるのだ。話さないで目を醒ますわけにはいかない――と目覚めに抗うのだけれど、みるみる躰全体の感覚が蘇り、否応なくうつつに引き戻されてしまった。

 目覚めて鏡を見ると目の縁に涙の跡があった。何だかよくはわからないが、たしかにひどく悲しい夢だったような気が、今になってしてきた。

 

 ここしばらくこんなに開けた風景を夢にみることがなかった。何か無意識くんには変化でもあったのかしら?

 「砂糖は腐るか?」という疑問は、今まで自分が問われて答えに窮するというパタンでしか登場して来なかった*1。夢の中では、問われるのが本当に嫌な質問なのだけれど、今朝は他人が問われてあっさり答えるのを目にしてしまった。やはり何かおつむの具合に変化があったのかもしれんなぁ。

 

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

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*1:cf. 「お砂糖って腐りますか?」【復旧時註】現在、未復旧。