三遊亭あほまろコレクション「絵葉書と写真に見る 明治の美人展」 at テプコ浅草館

三遊亭あほまろコレクション『絵葉書と写真に見る 明治の美人展』テプコ浅草館

 9日。三遊亭あほまろコレクション『絵葉書と写真に見る 明治の美人展』 テプコ浅草館*1、所用の帰り、ちょいと覗いてみた。

 わざわざこれを覗くためだけに出かける値打ちがあるかといえば、毎度、ここの展示の常、規模が小さくてアレなんだけれど。それでも今さらながら、明治のヒトってのは今の僕たちとは感じ方考え方にずいぶん隔たりがあるもんだなと思えたぶん覗いた甲斐は充分あった。

 開館時間、午前10時〜午後6時。今月26日まで、休館月曜。入場無料。

三遊亭あほまろコレクション『絵葉書と写真に見る 明治の美人展』

 絵葉書類のいくつかには、書き込みがあるのだけれど、旧字旧仮名、おまけにみなさんそれぞれに個性的な達筆でなかなか解読に窮する。

三遊亭あほまろコレクション『絵葉書と写真に見る 明治の美人展』

 水着写真も登場するのだけれど、どうもセクシーという感じではない。その割にはポーズもあれこれ豊かで、さて、ひょっとすると上野千鶴子『セクシィ・ギャルの大研究―女の読み方・読まれ方・読ませ方』が解読してみせたような現在の僕たちのとはずいぶん異なったコッケトリに関する記号体系でもあったってなことになるのかしら?

三遊亭あほまろコレクション『絵葉書と写真に見る 明治の美人展』
三遊亭あほまろコレクション『絵葉書と写真に見る 明治の美人展』

 今回の目玉、『日本美人帖』(時事新報社)。実際にどういうご令嬢たちが掲載されているかは、「深窓令嬢美人コンクール」(Hugo Strikes Back!)hatebuを参照するなり、 ポーラ文化研究所『幕末・明治美人帖』を読むなりしていただくとして、それより気になったのが「日本美人帖發刊趣意」。

三遊亭あほまろコレクション『絵葉書と写真に見る 明治の美人展』

此帖載する所は、悉く良家淑女の眞影にして、苟も容色を以て職業の資となすが如き品下れる者に非ざるが故に、觀者は相應の禮意を以て之に臨み、彼の坊間に有り觸れたる醜業者の寫眞などゝ同様に心得ざるやうにありたし。抑ゝ淑女の寫眞を蒐むるは、從來その例を見ざる所なるに、更に之を日本全國に求めたるに至りては、全く此帖を以て嚆矢となることなれば、觀者は亦た必らず世間稀有の珍として之を迎へ、又明治美人の眞鑑として、確かに後代に傳ふるの價値あるを認め、決して一塲の茶話的娯樂の具となさゞるならん。

と、このあとからこそまだまだ本格的に力のむやみに入った文章が始まるのだけれど、もういい加減旧字旧仮名の入力にくたびれたので、このあたりで止す。そもそものきっかけがトリビューンからの申し出だったせいもあって、この『美人帖』こそ国威宣揚にかかわる一大事みたいな調子(^_^;。明治人の書き物は、何かと騒がしい。

三遊亭あほまろコレクション『絵葉書と写真に見る 明治の美人展』

 『當世藝妓鏡』(帝國技藝新報社)。こちらは先の引用に謂う《容色を以て職業の資となすが如き品下れる者》ということになるのだろう。右側の姐さんには、こんなキャプションがつけられている。

温和しい者だ。さつぱりして居て面白い。
年は二十五歳。
清元が得意だが、其他何でもお望とあらば……。

 当てになるんだかならないんだか覚束なさげなキャッチコピーと、何やら思わせぶりな結び。なんだかまるで商品カタログみたいな調子だなと思っていると……。

三遊亭あほまろコレクション『絵葉書と写真に見る 明治の美人展』

 『美人かたろぐ 第一巻』(銀座上方屋)とタイトルからしてそのものズバリ。芸妓さん一人につき数枚ずつの写真。もはやキャッチコピーも何もない。容色のみが売り物ということになるんだろうか。『美人帖』との懸隔に何となく目眩めいたものを感じる。というかまぁ、国威宣揚の具であれ、カタログの中の一商品であれ、女性はヒトというより男性の玩具として扱われてたってことなんかなぁ。うーん。

 ケチをつけるようなアレになっちゃったけれど、展覧会そのものは面白く楽しいものでございましたよ。

 

 上野千鶴子のデビュー作。記号論がまだ流行っていた頃のなるほど本。

 

幕末・明治美人帖 (新人物文庫)

幕末・明治美人帖 (新人物文庫)

 

 時事新報社の美女コンテスト参加者の写真も相当数紹介されていたはず。

*1:【復旧時註】3.11の影響で、その後閉館してしまった。跡地は今どうなっているのかしら。