東京貼り紙・看板散歩/会社と社会のはざまで

20130915053632

 これは 「ついつい歩いてしまうのは悪い癖ですな」*1で、すでに一度紹介したことのある看板。言問橋の浅草側のたもとすぐ近く。あのときが2009年の夏、これは昨晩の撮影。相変わらず「株式社会」のままだ。

 白と黒、いたってシンプルな看板だから、「社会」部分を白で塗り潰して上から「会社」とすれば簡単に訂正できてしまうはず。実際、そういうふうにして訂正された看板も町中で見かけることがある。訂正ではなくて、「本日の埋草/気になる看板」*2で紹介した「万年風呂商会」の看板みたいに全面改定の場合だって存在する。ちょっとした誤りくらい簡単に訂正されていいような気がする。しかし、これはどうか。訂正されるどころか、きわめて良好な状態で「社会」が生き残り続けている。

 風雨と日光に晒され続けるこうした看板は、意外に早く傷み色褪せるものだ。これだけ良好な状態で残っているということは、ていねいに手入れされ、ひょっとすると描き直されさえしているかもしれないということではないか。もちろん、今日のペイント技術は、過去とは比べ物にならないほどの進歩を遂げている。だから、傷つきにくく色褪せにくいのかもしれない。しかし、この埃っぽい大東京にあって、これだけ良好な状態を保つためには、最低限定期的な清掃が不可欠だろう。「社会」という文字の並びの奇妙に気づかないわけはない。

 そう考えてみると、「株式社会」という表記、うっかりミスでそのままになっているってわけではないのかもしれないとも思えてくる。たとえば、「城東|株式|社会」なのではなくて、実は「城東|株式社|会」、つまり「城東株式社」の会である、とか、てのはあんまりなさそうか(^_^;)。あるいは、当初はミスだったのだが、「株式社会」という、ほのかに資本主義社会のあり方を皮肉っていると見れば見えないこともないかもしれない名前に、経営者さんが愛着を覚えてしまったとか、あるいはさらに、そういうミスも、あたかも確信的に看板にしているかのように振る舞えば、やがて名物になり、メディアにも取り上げられて相当の宣伝効果が期待できるのではないかという深慮遠謀があるとか。残念ながら、ググってみてもあんまり注目を浴びてはいないみたいだけれど*3。うーん、どれもありそうにない気がして来た\(^o^)/。まいるなぁ。

 

 その後、2016年に平凡社ライブラリー版が出た。でも、単行本と100円少々しか値段は変わらない。

 

*1:【復旧時註】未復旧。

*2:【復旧時註】未復旧。

*3:cf. google:"城東株式社会"