GyaO!小津安二郎生誕110周年記念 小津作品日替わり無料配信、本日の「父ありき」、人類ならちゃんと見ておくべき

 GyaO!小津安二郎作品の本日無料配信は「父ありき」*2、1942年という面倒な時代に公開された小津のトーキー4作目(くらいぢゃなかったかしら)、というようなことはさておき、これまでの作品にもあれこれ顔を出していた笠智衆がとうとう初主演するという記念的な作品。前作『戸田家の兄妹』(1941年)のほうがちょいと有名かなとは思うのだけれど、作品はこちらのほうが僕は好きだ。

 当時の笠智衆は38歳。それらしい年齢から老人に至るまで演じている。普通の基準で捉えれば大根なのかもしれないなぁ、と思わないでもないのだけれど、彼はもう抜き差しし難い小津映画的存在だな。佐野周二もいい。佐分利 信も出て来る。残念なところがあるとすれば、女優陣に活躍どころがないことくらいかなぁ。小津映画にはちょっと口うるさい女性が登場しないと、物足りないという気分は残る。あ、あと雑音が多くてセリフの聞き取りにくいところがいくつかある*3。少々聞き逃してもどってことないと僕は感じてしまうのだけれど。

 今日はいろいろ所用があって、なかなか落ち着いて見られそうもない。おまけに YouTubeにも全編は公開されていない。もう著作権切れなんだから、だれかアップしてくれんかなぁ*4。というのもさておき、皆様方にあらせられましては、ちょいと癪だけれどちゃんと見ておくのがいいです。

 冒頭のヴィデオは、YouTubeで断片的に公開されている『父ありき』の名場面の一つ。ギャオの「映像情報」にも《父子で釣りをする反復シーンは、親子の絆を深く印象付けるものとなっている》と冒頭に記されている。「反復シーン」とあるのはもう一度、この場面は作品ののちの部分で反復される*5から。二つの場面はなかなかいい感じに反響し合って作品をいっそう忘れ難いものにしているといえるかもしれない。ご覧になるときには、なんとなく心に留めて置かれるといいかも。とはいえもちろん、そんなことを気になさらずご覧になっても充分豊かな時間をお過ごしになれること請け合い。

 

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 松竹から出ているヤツ。デジタル修復とかについての言及がない。どの程度廉価盤より画質音質がいいのかはわかんない。でもまぁ、付録資料くらいはマシなのかなぁ。ご覧になったかたいらしたら教えていただけるとありがたいところ。

 上でも触れたとおりすでに著作権保護期間を過ぎているので、廉価版が複数出ている。たしかめたわけぢゃないけれど、画質その他はたぶんあまり期待できないのかな(cf. Amazon.co.jpでの「父ありき」検索結果)。

 

*1:【復旧時註】当初は全篇モノがなかったため部分のみのヴィデオを取り上げたがその後全篇が公開されたので、そちらに差し替えた。

*2:【復旧時註】もちろん、現在は無料配信されていない。

*3: 【復旧時註】そのせいなのかどうか、YouTubeには日本語字幕版も公開されていることがある。

*4:【復旧時註】ありがたいことにその後、公開された。冒頭のヴィデオはそうしたものの一つである。

*5: 実は他作品でも繰り返されているんだけれど。