小津安二郎の書きモノ、青空文庫で公開開始

 

 小津安二郎の書き物、今年著作権保護期間切れということで、青空文庫が作品の公開を始めた。

 現在公開されているのは、「ここが楢山 〈母を語る〉」(1958年)「車中も亦愉し」(1937年)「丸之内点景 ‥‥東京の盛り場を巡る」(1933年)の三篇。どれも分類すれば随筆ということになりそうな、たちどころに読めてしまうもの。派手なあれこれはないし、割と思いの向くままに書かれた気配もあって、まとまった思索を読み取るべしというような気負いなしに読めて愉しい。

 考えてみると、小津が書いた文章をちゃんと読むのは初めてのこと。というか、小津についての論考の類もロクスッポ読んだことがない。始めから終わりまで通して読んだものといえば、蓮實重彦『監督 小津安二郎』(筑摩書房)*2くらいか。後は京橋のフィルムセンターでの、80年から81年にかけての小津特集の折の『現代の眼』かなぁ。あ、ソンタグ『反解釈』(竹内書店)*3に出ていたあれこれの言及も、中身はまーったく覚えていないけれど、読んだには読んだか。司書の女王様からいただいた『小津安二郎東京物語―リブロ・シネマテーク』は、読み終える前に火事で焼いちゃったしなぁ…(;´Д`)ウウッ…。

 自分で分析的に考えをまとめたことだってない。学生時代、映画演劇論の授業で『生まれてはみたけれど』についてレポート用紙5枚ちょいくらい書いたのがせいぜいか。ボルジア先生によれば分析なしに真の感動なしとか何とかなのだそうだから、真の感動とは無縁のところからしか眺めていないのかもしれないけれど、まぁ小津はいいなぁ。

 ボルジア先生といえば、「雑感(『浮草』と清順)」(borujiaya)hatebuを、皆の衆は読んだかしら?

 

監督 小津安二郎〔増補決定版〕 (ちくま学芸文庫)
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反解釈 (ちくま学芸文庫)
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小津安二郎東京物語―リブロ・シネマテーク
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*1:【復旧時註】元エントリでは、Floating Weeds 1959 rainy street - YouTubeを使っていた。ピローショットについて多少細かく触れている点が気に入ったので、現在のものに差し替えた。

*2: リンク先はちくま学芸文庫の増補決定版。

*3: リンク先はちくま学芸文庫版。