バベルの図書館の「あったかいんだからぁ♪」の狸2世

 別にこれで盗作云々といったお話をするつもりはございまっせん。相互の類似具合はさまざまであって、並べられていなければ似ていると感じられたものが並べられたおかげでさほど似てもいないかな、というふうに感じられるものもあるし、ビートルズあたりはかなり強引かもなぁってところ。というようなことはどうでもよくて、そもそも、あのリフレインはどこかで耳にしたよなぁとぼんやりとでも感じていたヒトは多かったんぢゃないかしら。でも、どれがコピー元であるかなんてわかんない、うっかり自分の贔屓のアーチストさんのこそオリジナルだと主張すれば、さらなるネタ元らしきものが、ズルズルと登場して来そうな感じぢゃないか。そこいらへんが興味深いといえば興味深い。

 正直申し上げれば、押尾コータローもGILLEのバックで本作のカヴァーに参加している*1という一点を除いて、この作品にそんなに関心があるわけでもない。けれど、こういうことは実はしょっちゅうあることであって、ここに上がった20曲に限った話でもないんぢゃないか。1963年以前にだって音楽は存在していたわけだし。というあたり。

 ホモフォニックな音楽でもって4拍子系のリズム、調性も単純にしなければならないという強力な縛りがあるところで作られる歌は、歌メロで独自性を誇るようなものに仕上がる心配はほとんどない。ほどほどに美しいと感じられるものほど先行する歌のなにがしかを受け継いで出来上がっているものだ、とまでは云いきりはしないけれど、そういうところとそうは遠くない事情が確実に存在する。

 

 ポール・サイモンが何かのインタヴューで、「ソロになってからは S&G 時代のような美しいメロディラインを作らなくなったのはなぜか」という、とりようによっては大変失礼な質問を受けたときの応答を何となく思い出す。「それはもっともな質問だな。だけど答えははっきりしている。美しいメロディは巧まずとも自然に口をついて出て来るんだけれど、そういう自然に頼っていると遠からずみんな似たり寄ったりの、どこかで聴いたことのあるような歌になっちゃうんだ。だから、自然に口をついて出て来るメロディにはあえて逆らうようにして作るんだ」というような大意だったと思う。小学生時代、図書室で読んだ渡辺 茂*2の、子ども向け作曲入門の本*3にも似たような話が書かれていて(^_^;)、そんな具合だからこそ気に入った歌のメロディはちゃんと階名*4で暗記してしまうこと、それも出来る限りたくさん覚え込んでしまうことが実は自分自身の音楽を作る出発点として大切なのだとかなんとか*5

 そうした努力がなされたとしても、所詮、先に上げたような強力な縛りの中での順列組合せ、どう奮闘したところで、実は縛り自体がメロディの半ば以上を決めているようなもの、どのみち原理的には順列組み合わせの数は有限であって、同一ではなく類似まで話の範囲を広げてしまえば、どうしたってもうアレな具合だもんね*6

 そこいらへん、もちっと自覚的でさえあってくれれば、盗作騒動の類、著作権をめぐるグダグダだって、少なくともポピュラー・ソングの世界ではもちっと穏やかなものにだってなってくれて良さそうなもんだよなぁ、とも思うんだけれど、お金が絡むとそんな自覚なんぞあってもぶっ飛んヂャうのが大人の世界というものなのでござんしょうかねぇ。

 

 今日はバート・バカラックの誕生日だったり、ガリバーの猿のタイプライターネタについて考えていた未明には「Library of Babel」hatebu*7の話題が目に飛び込んできたり、昨晩からたまたま仕事の関係で『第二芸術論』のことを思い出したりでいたところ、冒頭のヴィデオに出喰わしたもんで、なんだか勢いで書いちゃった。というような個人的事情はさておき、ポピュラーなカルチャーの中での順列組合せ問題って、結構デカいもんだと思いません? 僕は面倒臭いからそんなことは考えたりしないのだけれど、頭のいいヒトならすっきりした議論をデッチ上げてこういう話にケリをつけるくらいのことは出来そうなもんぢゃないか。もうどこかにそういう論考はあるんだけれど、それを僕が知らないだけかしら。それはそれでありそうな話だな。うーん\(^o^)/

 

伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集 (岩波文庫)

 

 「バベルの図書館」収録。

 

壁 (新潮文庫)

壁 (新潮文庫)

 

 「バベルの塔の狸」収録。

 

豪華本バビル2世 全8巻セット

豪華本バビル2世 全8巻セット

 

 バベルの塔に住んでいるのは超能力少年バビル2世なのですね。

 というわけでまぁ、タイトルも順列組合せ風味で(違

*1:cf. GILLE - あったかいんだからぁ♪ feat. 押尾コータロー (Teaser) - UNIVERSAL MUSIC JAPAN、YouTubehatebu

*2: 最近はもう名前だけでは通じなくなっちゃったかもしれないのだけれど、「たきび」や「ふしぎなポケット」の作曲者さんとして有名だったヒト。ご存じなければYouTubeででも検索なさると、たぶんどちらも簡単に見つかる。

*3: 記憶は正確ではないのだけれど、時期的に見てたぶん『作曲のべんきょう』(音楽之友社、1964年)ではないかと思う。すでに結構ボロボロになっていたような。

*4: 「階名」が何のことだかわかんないヒトは、「音名・階名表記」(Wikipedia)hatebuででも意味を確認しておくこと。

*5: 後になって読んだ小林秀雄モーツァルトがどうたらこうたらの大仰な書きっぷりにうんざりした原因はこのへんをすでに読んでいたからだったのかな、と今にして気づくという為体…(;´Д`)ウウッ…。

*6: ここいらへん、しばしば勘違いされちゃうのだけれど、別にポピュラーな歌の世界を小馬鹿にして申し上げているのではない。歌を単純に音楽に属するものとして考えるのは間違いだというような話は、以前本家「与太」でもここでもしてきたと思うんだけれど、その理由のすべてではないけれど、一端にはここいらへんの事情もある。俳句がたいてい五七五で、みんな音数が同じだと指摘してもそれを批判だと考えるヒトは、そんなに多くはいらっしゃらないでしょ? それと同じだと考えてほしいなぁ。ポピュラー・ソングの世界にに音楽の議論がいくらか入り込んで来るのは、たとえば今日が誕生日のバート・バカラックの作品だとかちょっと限定的な話になってくるんぢゃないかな。

*7: 日本語情報としては、「『バベルの図書館』を再現したWebサイト公開」(カレントアウェアネス・ポータル)hatebu「空想上の『バベルの図書館』を再現したサイト『The Library of Babel』」(hon.jp)hatebu など参照。