図書館・図書室では、踊ったり飛んだり跳ねたりバク転したりサッカーしたりしてはいけませんですね。
夏休みのおかげさまで、「本日の村上春樹/日本近代文芸批評と読書感想文」へのアクセスが急増している模様。でも、アレはちょいとおちゃらけ過ぎのところもあって、今一つ信用出来ないというケシカランヒトもゐるやうだ。お勉強の類となると何でもシリアスな文体で語られねばならぬというようなツマラン権威主義への囚われはどうにかしていただきたい。
ずいぶん以前の記事だけれど、「読書感想文とは、いったい『何』で、どのように書いたらよいのか?」(NAKAHARA-LAB.NET 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する) が、やはり同趣旨の読書感想文のコツを取り上げている。記事中の「読書感想文が得意だったというある方」の話をちょいと引用。
読書感想文? あのね、「評価される読書感想文」には、フォーマットがあるの。中原君、知らないの?
読書感想文は、読書したことの感想を書いちゃ「だめ」なんだよ。あれは、「読書」をきっかけにした「経験文」なの。「自分の経験紹介と、その意味づけを先生に示す文章」なんだから。
書き方はサンドイッチにすればいいの。
はい、まず数行で、本の紹介をする。読書の部分はそれでいいの。その後は、ひたすら、その本の内容に「ゆるく関連した」自分の出来事や経験を、それを知らない先生に対して書く。それに対する自分なりの意味づけも忘れない。
最後のオチは、本に戻る。自分の経験に関連した内容で、本に書いてある印象深い一節を引用して終わる。
読書感想文は「読書の感想」なんか書いちゃだめなの。メインのコンテンツは、自分の経験紹介なんだから。
なぜそれが読書感想文のコツになるのかは書かれていないし、筆者氏はこうした書き方が正統なものといえるかどうかいくらか懐疑的みたいだけれど、いずれにしても、村上春樹が「ほとんど関係ない話」としているところに自分の経験を織り込んで書くといいとしていた「日本近代文芸批評と読書感想文」の内容ときれいに重なってくるでしょ?
で、なぜこうした書き方がコツになるのかを確認しておくと、読んだことをただの
何にしても読書論めいた方向から眺めてみれば、感想文が自分語りを含むのはアタリキシャリキなんぢゃないのかな。本を読んでただ楽しんだとか感動したとか知識を増やしたとかでは意味がない、読書を通じて知ったことを自分の問題として捉えることで、なにがしかの変化/成長を遂げて初めて読書は血肉化されたといえるのである、とか何とかそういうお話ってあるぢゃないですか。もし良質の読書経験がそのような形に収まるものだとするなら、そこで書かれる読書感想文もまたそのような形を反映していると考えられる。とすれば、そういう感想文に書かれる内容はどうなるか、そんなふうに考えてみれば、なにがしかの自分の経験がそこに書かれないはずはないくらいのもんだ。
もちろん、とくにあてがいぶちの課題図書でいきなり自分の世界観が百八十度変わったぜぃとか、わたしはこんなに人間的に成長しましたとか書かれていれば、これはもうイカにもタコにも怪しいお話にしかならないけれど、でも何か気づきの経験の一つも出て来ないのは情けないくらいのもんだとは云えるでしょ。その気づきの最も手っ取り早いネタ資源となれば、自分の経験以外ない。
で、そういうところにいくらか真面目にお付き合いしようかしらということになれば、これはまた当然選書の段階に力を入れなきゃねってことになるわけ。でしょ?
しかしなぁ、もし文章指導みたいなものを長期的に考えた場合、この手の読書感想文ってどんなものかなぁという気はする。読書そのものの幅を思いっきり狭める体のものぢゃないかと思うなぁ。ホントは、
今になって考えてみれば、これがもし仮に「自分が読んだ面白い本を友達におすすめする文章を書いてよ」と言われたら、少しはわかる気がしますし、もうちょっと気楽にかけた気がするのです。まぁ、相変わらず苦手だったでしょうけれど、でも、「少しはまし」だった気もする。
「おすすめ書籍紹介文」という場合には「面白いから読んでみて、とおすすめする」という「目的」と、「友達」という「宛先」があるからです。
「宛先」の人の興味関心にあったかたちで、それにひきつけて、思わず手に取ってしまうように書くことができるのかもしれませんね。
ibid.
みたいなところからはじめて、ブックレヴューの書き方へとつなげてゆくような指導、指導があった上での宿題なんかのほうが有意義だと思うんだがなぁ。
さもなければ……、ともう書くのが面倒臭くなってきたので、今日はここでオシマイ!
課題図書には理系本だってある
僕らのときだって、結構あったような記憶がある。中学時代には『生きている自然』とかいう生態学入門みたいな本で感想文を書いたもんね。「夜空の星を煩わせることなく、昼、野の花一輪を摘むことはできない」とかいう言葉、今でも覚えている。ガラパゴスウミトカゲかなんかの写真が表紙のやつ。
うちの常連さんには理系の方も多いみたいだけれど、そういう立場からだって感想文の指導が出来ないわけではないんぢゃないかしら。年齢によっては親との会話が面倒臭さがられるってなこともあるだろうけれど、鬱陶しい宿題が手伝ってもらえるかも、ってなことになれば話は変わってくる(かもしれない)。親子の対話復活のチャンスになる(かもしれない)ですよ。
- 作者: ニコラデイビス,出川洋介,エミリーサットン,Nicola Davies,Emily Sutton,越智典子
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小学校高学年。
中学生向け課題図書。「ウナギ研究の異端児 市場に出回るウナギの正体を暴く」(Wedge、Yahoo!ニュース) のインタヴュー中にも本書の著者の名前が登場していた。このへん、ネット民な親御さんならいろいろ話ができるかもですね。
高校生の課題図書。バイオロギング絡みの。バイオロギングなら3、4年前くらいに科学博物館で企画展があったっけか。ご覧になった方なら、そのへんからでも何か話が出来るのでは?