中国の贋作文化に就て
Journeyman Pictures の YouTube チャンネル 、12月16日公開。
Al Jazeera English の YouTube チャンネル 、11月30日公開。
英語がよくわかってないから話の詳細には踏み込まない。しかし、踏み込まなくてもどちらも充分に興味深いんぢゃないか。
中国のコピーものというと、種々のブランド物やらスマートフォンやらテーマパークやらなにかと現代的な話題に事欠かない。うっかりすると、そういう現代的なコピーは、金の亡者と化したヒトビトの所業ってなふうに思っちゃうかもしれないのだけれど、こういう話を目にすると、所謂「知的所有権」に対する中国のユルさはもう文化として根ざしているのであって、少々の取り締まりでどうにかなるものではないのかもしれないという気にもなって来る。古代のブツをコピーし、近代のブツもコピーするとなれば、現代のブツをコピーしないでどうするってなもん。
そっくりだとは到底思えないようなゴッホがそれなりのお値段で売れているというあたり、しかもお得意様が欧米のヒトらしいってあたりがおもしろい。これだけ似ていないのだから、贋作でヒトから金を騙し取るというのとも違う。おまけにリミックスっぽいこともなされている。ことの必然は、アートの意図、商売の都合といったヒトの思惑の如何によらず現れるということなのかどうか。
ただし、古代骨董のほう、それなりの学者さんなりコレクターさんなりにもなかなか見分けられないというような偽物が出没するとなると呑気に構えてばかりはいられない、というのは骨董好きのお金持ち限定の話で、貧乏人たる僕が傍観するぶんにはやはりおもしろい。実際にブツをこしらえている職人さんの制作そのものには、とんでもない詐欺的意図などなさそうに見える。オリジナルのブツを精細繊細に模倣し一定の評価対価を得ることが別段常識外れとは考えられておらず仕事の喜びとして捉えられている(ようだ)。ただし、こちらはさくさく量産されてしまうそっくりとは思えないゴッホとは違って、ホンモノそっくりに仕上げる腕前が発揮されているところから問題は生じる。安く買い叩きオークションで大儲けを目論む連中が話をややこしくしてしまうというわけか。造形の価値と真贋の価値の関係をもっともらしく考えたフリをしてみせるには、好都合なネタになりそう(^_^;)。
だからどうしたというような結論は毎度ながらないのだけれど、世間様で喋々される真贋をめぐる話のあらかたは詰まらないとしか思えない者としては、頭の中でしばらくは転がしておきたくなる話だな。
参考文献、みたいな
- 幸田露伴「骨董」(青空文庫)
偉い物識が延々うだうだを綴るとこうなるぞ、凡人どもめ、という佳作でございますね。
- 幸田露伴「骨董」(えあ草紙)
- 幸田露伴「骨董」
無料Kindle版。
改めて目を通していてようやく気づいたのだけれど、えあ草紙だと「く」の字を倒した繰り返し記号がちゃんと表示されるのに、KindleのPC版だと繰り返し記号が本来の文字に直されて表示されてしまうのね。近代文学の古っちい文章を読むのなら、これは同じ無料でもえあ草紙を使わないわけにはいかなくなっちゃうなぁ。
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にせもの美術史―メトロポリタン美術館長と贋作者たちの頭脳戦 (朝日文庫)
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