本日のBGV/Long Play

 CBCYouTubeチャンネルから27日公開。

 We take things slow with Slow TV - meditate and relax as these records spin softly in the background.

というわけのわからない趣旨での公開。この映像が、音もないまま、延々1時間50分少々続く。

 当初はお若い世代へのLP文化の紹介みたいな教育的効果はあるかもしれないとの考えもぎったけれど、レコードスプレーもレコード拭きも登場しないし、そもそも盤面を裏返すことがない。いずれもがLPをかけるときの儀式的所作として欠かせないものであり、それを省略してしまったのでは、LPを演奏する文化的コンテキストは決して正確に伝承されることはないだろう。

 現に1枚目、針を収めたカートリッジあたりから糸状の埃が伸び出しているという為体。保存されてきたLP盤を傷めるようなざまでどうしますか。盤面を裏返すところが収録されなければ、CDくらいにしか円盤状メディアを知らないお若い方には、LPもまたCD同様、裏返す必要の存在しない再生メディアだったのだと誤解されかねないのではないか。とお小言めいた文句ばかりが頭に浮かんで、とても瞑想どころではない。

 しかし、そういうところが映し出されていたとして、そうしたアレコレがなにほどの重要性をもってお若い方たちに受け止められるか。僕ら世代の爺ぃどもが、さらなる爺ぃたちの鉄の針がどうした、竹の針がどうしたと朝顔のついた蓄音機を巡って薀蓄うんちくを垂れているのを煙たく面倒臭いモノとしか受け止められないのと同じようにしか考えないのかもしれない。

 そんなことを考えるともなく考えていると、LP盤の再生なんてなのがずいぶん野蛮なものとも思えてくる。LP盤であれカセットテープであれ、僕らの10代の再生装置は、記録媒体と再生装置の接触なしには成立しないものだった。記憶媒体を少しずつこそげ消し去ることなしには再生できないシロモノだったわけだ。記憶を刮げ切ってしまえば、そこには呆け老人ならぬボケLPが出来する。ノイズ・リダクションを通してしまえば、もはや何の音も再生できない塩化ビニル樹脂の円盤がぐるぐる回っているだけだ。

 と、生悟りをひらいてしまえば、なるほどこれは瞑想のためのヴィデオということになるのかもしれない。

 なぁんてなことはなさそうだけれど\(^o^)/

 

蓄音機

蓄音機

 

 寺田寅彦先生、Kindle無料版。当然、青空文庫でも読める(寺田寅彦「蓄音機」(青空文庫)hatebu寺田寅彦「蓄音機」(えあ草紙)hatebu)。これに限らず寅彦先生の蓄音機をめぐるエッセイは、アイディア冴えたもの、泣けるものいろいろあって飽きない。青空文庫でも漁ってみられるがよろしい。

円筒レコード式エジソン蓄音機 (大人の科学マガジンシリーズ)

円筒レコード式エジソン蓄音機 (大人の科学マガジンシリーズ)