堺貼り紙・看板散歩/向き、行き、寄り、側……

 意味はわかるから「向き」で困るわけではないのだけれど、何となく違和感を覚える。自分の知らなかった言葉遣いというのは、仮にそれが正しいと世間的に認められるものであっても、気持ち悪さ、落ち着きの悪さを感じてしまう。いや、「向き」が正しいと認められている表現なのかどうか、この場合は知らないのだけれど。でも、堂々と2箇所で使われているのだから、たぶん少なくとも乗合バス業界では正しいと認められているものなのだろう。

 

 どこそこ「行き」なのはバスの車両であってバス停ではない。だから、「北野田駅福町停留所」という表現は、理屈として正しくないのかもしれない。でも、「向き」といっても、バス停留所の、あれは何ていうんだろう、看板、立看でもないし高札というのも変だし……あの時刻表のついたバス停の目印に然るべき表面と裏面が存在していて、その表正面が北野田駅の方向を「向いている」というわけではないように素人目には見える。プロが見れば、表と裏は紛れようもないものと見えるのだろうか。それとも反対側車線の停留所よりも、移動前から、わずかであるにせよ北野田駅に近い場所にあったから「寄り」なのだろうか。でもことさら云い立てるほど、駅からの遠近の差があったとは思えないのだが。

 加えて、2箇所にわたる使われ方も奇妙に思える。上のものは用語の問題として我慢してもいい。けれど、下のものはどうか。話は通じるとしても、同じことばが短いテキストの中でまったく異なった意味で用いられているのが気持ち悪くはないか。下のほうは「北野田駅寄りに」とか「北野田駅に」とかしたほうがスッキリするのではないか。う~ん。

 

 というようなことをウダウダ頭の中で転がしながら、でも別に南海バス堺営業所あたりに苦情を訴えるというようなことはこれっぽちも考えない。そんな面倒臭いこと、するわけがない。ただまぁ、違和感をゴロゴロ転がすのをいくらか愉しんでいるというテイタラク