本日のSong/大貫妙子 - 明日から、ドラマ

 大貫妙子*1、1976年リリース作品。記憶では何かテレビ番組のテーマか何かに使われていたような気がするのだけれど、あやふやで自分でも信用できない\(^o^)/。76年だからまだ現在の大貫妙子の作風とはずいぶん雰囲気が異なるのだけれど、それでも歌詞はドラマ・映画シナリオ仕様という感じはすでにある、というあたりは、説明せずとも聴けばわかるか。

 「本日のSong/小室 等 - 夏が終る」 hatena bookmarkを読み直しながら*2、季節の終わりと三拍子つながりで思い出したのだった。「夏が終る」を収録した『いま生きているということ』のリリースが1976年だから、まったくの同時代。したがって数学的帰納法により70年代後半、季節の終わりを歌った作品はすべて三拍子だった、というような結論が出る、わけはない\(^o^)/

 

 他人様ひとさまに絶対に聴かれない環境でなら今でもときどき口ずさむことがある。特別のお気に入りというわけでもないし個人的な思い出と密接に結びついた出来事があるというわけでもないのだけれど、何となく躰に沁みついた歌になっている。ひょっとすると10代前半から半ばあたりに聴いた音楽が当人の好みに大きな影響を与えるとかなんとかのせいなんだろうか*3。お気に入りというのではなくても、愛着を感じるということなら当たっているということなのかもしれない。

 作品の組み立ては初期大貫作品の中ではかなりシンプルで手堅い部類に入るのではないかしら。バックのギターのイントロ、歌伴、間奏で繰り返される基本パタンは(play keyで)Am⇒Am on G⇒Am on F#⇒Am on F、Am⇒Am on G⇒Am on F⇒E7、Amのところには11thとか9thとからへんを交えられているアルペジオ、おおよそのところ、聴き慣れた、それこそ「クリシェ(cliché)」という感じ。サビで出て来るDm7⇒Dm7 on G⇒B♭ on Cあたりに当時の「ニュー・ミュージック」の中ではまだかろうじて目新しさがなくもないくらいかな。でもこれも突飛な進行では全然ないよね。

 松任谷正隆のアレンジも落ち着いていて手練てだれの仕事、歌を邪魔しないものになっている。申し分なし。

 

 しかし、それにしても、と思うのは、大貫作品の登場人物はやたらと別れて改めて出会う、あるいは再会の予感を抱くもんだわね。ここでは「めぐり逢えたらドラマは始まる」わけだけれど、他にも「生きてさえいればまた会える」とか、別れた人物から「突然の贈り物」が舞い込んできたりとか、……例を挙げ始めると切りがなくなりそうだから止すけれど、そういう具合だから「愛をあきらめないで」というふうにもなるんだろう。何にしても、初期の歌詞の中ではこの主題はまだ珍しいといえるかもしれない。でも、その割に手際よくまとめられている感じ。

 何から何まで手堅く落ち着いていて、たしかにこれはどこからの依頼があって、とくに破綻のないようていねいに制作されたものなのかな、という気がする。それとも、1stアルバム『Grey Skies』での少々チャレンジングな作り方への反省があってこうなったのかもなぁ。全部ただの憶測だからして、違ってたらごめんなさいm(_ _)m。

 

Grey Skies
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 大貫妙子、ソロデビュー盤。山下達郎坂本龍一細野晴臣……と錚々たるバックがついている。でも、そういうヒトたちが参加していない「When I Met The Grey Sky」が一番心に残る。矢野 誠アレンジに参りますわ。

 今に続く大貫妙子の作風は『Cliché』(1982年)からだから、以降の作品が好きだという方にはお薦めしていいかどうか迷うのだけれど、この際だから聴いてごらんになるといいんぢゃないでせうか^^;。

 現在では「明日から、ドラマ」がボーナス・トラックで収録されている。「明日から」は長らくアルバム未収録だった。何とかいうコンピレーション・アルバムに収められていたことも以前あったように記憶しているけれど、すでに廃盤。今はこれで、ということになるのかな。

 

*1:cf. google:大貫妙子

*2: なにしろ記事公開後こそが推敲の本番だもんね\(^o^)/

*3:cf. 「Opinion | The Songs That Bind」(The New York Times) hatena bookmark