日本語情報としては、「『環境少女』グレタさんに授与 『もう一つのノーベル賞』(東京新聞) など。「もう一つのノーベル賞」というのは、「The Right Livelihood Award」 のこと。「ライト・ライブリフッド」、すなわち「正しい生き方」というのはなんだか気持ちの悪い名称だなと個人的には思っちゃうんだけれど、なにがしかの評価がなされるのはあっていいことだよな。
しかし、なぜ「もう一つのノーベル賞」なのかは結構気になるところ。
ユクスキュル*1は、ライト・ライブリフッド賞を創設する前に、ノーベル財団に、ノーベル賞と同時に授与する新しい賞を作ろうと働きかけた。だが、1969年にはじまったノーベル経済学賞後に巻き起こった議論の後、ノーベル財団は、いかなる賞とも関係しないと決定していた。そこで、ユクスキュルの提案は却下され、彼は独自にライト・ライブリフッド賞を創設するに至った。
たぶん、そこいらへんからのことなのかな。
ついでながら、《日本では高木仁三郎(1997)と生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(1989)が受賞している》とのこと。「Democracy Now!」 *2のエイミー・グッドマン(Amy Goodman)なんかも受賞しているのね、全然知らんかった\(^o^)/。
こういうことがある一方で、「グレタさんの母『娘は空気中の二酸化炭素を裸眼で見ることができる』」(Share News Japan) というような記事が拾われ拡散していたりする。見出しの作り方や記事の書き方、twitterでの反応の拾い方のいずれを見ても、かなりはっきりした意図の下で書かれたというふうに見える。
「『娘(グレタ)は二酸化炭素が見える』という情報はフェイク」(Togetter) 、「グレタさん母『娘は二酸化炭素が肉眼で見える』記事で批判集まる→実際は比喩表現を切り取り報道したデマ(篠原修司)」(個人 - Yahoo!ニュース) など読まれたし。ネタ元記事ですら「比喩」であることを断っているにもかかわらず、日本語記事ではその点に触れていないというのは、相当の悪意があってのことだろう。しかも5月4日、すでにグレタ・トゥーンベリ本人によって否定された話*3だというのだから、件の記事(9月25日付になっている)の
その他にも、いろいろ変なデマが流されているらしい。
【注意】ヴィーガン食をするグレタ・トゥーンベリさんの写真の端にハムを足したコラージュ画像が拡散されています。オリジナルの写真はこちら https://t.co/FB0u0IuZz8
— ネット上の情報検証まとめ (@jishin_dema) September 26, 2019
コラージュ画像のほうは未確認なのだけれど。
THE GRETA THUNBERG HELPLINE:
— Mark Humphries (@markhumphries) September 26, 2019
For adults angry at a child. pic.twitter.com/JAtIKyG4Va
というような、トゥーンベリにケチをつけたくて仕方がないヒト向けの「カウンセリング」動画まで出ている^^;*4。
そんなものまで必要だとなると、また僕たちは学び損ねてしまうということになるんだろうか。
Sound familiar? This speech from a 1992 UN environmental conference has striking parallels with @GretaThunberg's viral UN speech delivered this week.
— DW News (@dwnews) September 26, 2019
Severn Cullis-Suzuki was only 12 at the time and has been an environmental activist ever since. pic.twitter.com/WMzbUEB6mk
via. 「牧野アンドレ @もうすぐイラクさんのツイート: "16歳のグレタさんが国連で環境保護を訴える演説をし、感動した人、ヒステリックになった人、色んな反応があった。 ただ30年前、当時12歳であったサヴァン・スズキさんが国連の会合で同じようなスピーチをしていた事は知らなかった。 世界は学んでいない、という事実。 https://t.co/dvDcqWNGcp"」 。
付録/グレタ・トゥーンベリ、TEDでの講演
「本日の備忘録/矢面に立つということ」 で僕は《率直にいえば、グレタ・トゥーンベリの国連演説は素晴らしいとは云い辛いものだった。ここに至るまでの彼女の大人との応答のアレコレと比べれば、格段に不出来だったとさえ思う》と書いた。このへん、国連演説を評価している方たちには通じにくかったかも。応答のアレコレでは、演説とは形もコンテキストも違ってくるから、語りのあり方が異なるのも当然。したがって、不出来云々にはあんまり説得力もなかったかも。そこいらへん、彼女の語りがまとまった形で見られるヴィデオがないかアレコレ漁っていて、これ、昨年12月の講演を見つけた。実に淡々と落ち着いたものでしょ? 何ならもう少しくらい抑揚があってもいいくらいかも^^;。僕はこういう超坦々ぢゃないよ、超淡々としたメリハリのない講演が好きなのだけれど。淡々としているぶん、真面目に聞き入るヒトには内容の重みが伝わって来るように感じられるでしょ?
こういう淡々とした語りであれば、では非難は少なくなったかどうか、そのあたりはかなり怪しいんぢゃないかという気がする。すでに触れたようにデマすら流してまでグレタ・トゥーンベリの主張を潰したいと願うヒトビトが存在しているからだ。
国連での演説、あれはあれでいいんだ、優れているんだと評価していたヒトたちなら、高評価に変わりはないとしても、多少見方が変わるんぢゃないか。あれだけ激した調子になった所以も、この淡々とした講演を見た後なら一層くっきりしてくるように思えるからだ。ヒトビトが然るべき行動を採らないのは充分に事態を知らないからだと考えていた。でもたぶん、その後接した大人たちは事態を知悉していた。となると、知っているのにもかかわらず放置していると解釈せざるを得なくなる。つまり、自分たちの未来をぶち壊しにするこういう態度は「邪悪」ゆえだと考えざるを得ないことを、この間思い知らされ続けて来たということなのかもしれない。そう思ってみると、また感じ方は変わってくるんぢゃないかしら。そうでもないですかね^^;。
でも、そのへんの実感をアカラサマにしても、仲間かもしれない若者たちはさておき、問題となる大人たちには通じにくいだろうとは、やっぱり思っちゃうな。
そのへんはまぁ、「『地球の気温は250度まで上昇し硫酸の雨が降る』ホーキング博士」(ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト、2017年7月4日付記事) みたいな報道がとっくになされているというのに、我が子の出産を間近に控えた一国の代表がへっちゃらでステーキを喰らってから気候変動の国際的な会議に出席するくらいなんだから、実のところ事態はほとんど知られないまんまなのかもしれない。あるいは、肉を喰わなければ気候変動が止まると決まったわけではなくて、食用植物の栽培なんかだってものによりけり、環境にダメージをもたらすことがわかっている*6今日、ヴェーガンであるからといってその他の食事を摂るヒトビトを非難するわけにもいかないんぢゃないかとか、気候変動への対応だけを突き進めれば他の人道危機を招くことだっていくらもあって、物事のプライオリティを決定するのはむずかしいとか、いくらもイクスキューズのネタに事欠かないに違いないのだけれど、「Top four ways to shrink your carbon footprint are often overlooked」(yahoo! news、AFP配信記事) の、すでに公開されている4つの方途くらいは、徹底できなくてもそこそこ実践するヒトが増えるだけで事態はずいぶん違ってくるだろうわけで、イクスキューズの声ばかりがデカいとやっぱり結構邪悪ってことになるんだろうなぁ。
というわけで、Don't trust anyone over 30ってのが今回の結論ですね!
ここで取り上げられるブツん中では結構なランクなんだけれど、世の中でのグレタ・トゥーンベリの知名度急上昇を考えると、1600位台というのは結構微妙なところか。う~ん。
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こちらのほうがランクが上だぜぃ。やっぱり厚さとか価格とかって英語より大きな障害になるんですかね?
*1:【引用者註】賞の創設者さん。フォン・ユクスキュルといっても、「環世界」のユクスキュルとは別人だよん。為念。
*2: ついでのついでながら、Democracy Now!でも、グレタ・トゥーンベリへのエイミー・グッドマンによるインタヴューを公開している。cf. 「“We Are Striking to Disrupt the System”: An Hour with 16-Year-Old Climate Activist Greta Thunberg」(Democracy Now!)
*3:cf. 5月4日のグレタ・トゥーンベリによるFacebookへの投稿記事
*4:via. 町山智浩さんのツイート: "グレタ・トゥーンベリさんにイライラする大人のための電話カウンセリング。「大人みたいに話す子どもを見ると大人は子どもみたいになりがちです」「まず最初にお尋ねしますが、あなたのアイコンは卵じゃないですか?」… "
*5: 日本語字幕も利用可能になっている。再生画面右下の「CC」をクリックしてその下に赤線が表示されるようにし、次に歯車アイコンをクリックして「Subtitle/CC」をクリック、開いた字幕言語選択メニューから「Japanese」を選択すればいい。再生開始直後にPauseして一連の作業を行えば、最初から日本語字幕が見られるようになる。