本日の教えてくん/サラバンド、サラバンド、どうしてお前はサラバンドなの?
なんだけれど、あれ? っと思うよねぇ。サラバンドといえば三拍子の舞曲と相場は決まっているはずなんだけれど*1……。
たとえば、
という具合にバッハは三拍子だしぃ、
ヘンデルも三拍子でもって、
ピアノ譜になっちゃったけれど*4、サティだって三拍子なのだ。
ところが本作はのっけから五拍子だもんね。五拍子×2、三拍子×2で、四拍子×2……。「マス・ロック(math rock)」なら聴いたことがあるけれど、まさか「マス・サラバンド」ってな具合にゃまいりますまい。
句またがり的に拍をズラしたり勝手にまとめ直したりってわけにもいかないよねぇ。たぶん、何か楽典上の基礎知識の欠如か何かのせいで僕にはわかんないだけってなところなんだろうけれど。うー。
ついでながら、本作、譜面中には何箇所かハーモニクスの指定があるのだけれど、どういう効果を狙ってのものなのかもわかんない。音色を変える意味はなさそうだし、左手の運指が楽になるわけでもない。YouTubeに上がっているプロ・アマ問わないヒトたちだって多くの場合、無視して普通に弾いていたりする。どうなっちゃってるんだろう? う~ん。
チャーミングだし難しい指使いが求められるわけでもない。スティール弦のギターでも問題なく演奏できそう。だから、自分のレパートリーに加えてみたいところだけれど、解釈どうこう以前に入口で躓いて転んだまんま起き上がれない感じ>┼○ バタッ
譜面の最初のページの最上部に「To Ida Presti」と献辞がある。イダ・プレスティは当時の代表的な女性ギタリストにして作曲家*5。彼女にこの作品は献呈されているわけだけれど、プーランク自身作曲後(1960年)間もなく63年に亡くなっているし、67年にはプレスティも肺がんでこの世を去ってしまい、多忙な彼女に演奏される機会はなかったのだそうな。プーランク唯一のギター曲だというのに*6、なんかしら切ない話だわね。
立ち読み課題図書、その他
僕がプーランクのサラバンドを知ったのは、このアルバムの1曲目のピアノ演奏によってだった。実際のところ、サラバンドがなにがしか重厚な雰囲気を不可欠とするものであるなら、ギターよりピアノの音色のほうがふさわしいということになっちゃうかもなぁ。火事で消失してからというもの、聴き直す折を持たぬまま過ごしてしまったけれど、頭の中で再生してみるかぎりそのへんの印象は変わっていない。
収録作品はオリジナル、カヴァーとも気持ちのいいものばかりだけれど、坂本龍一の2作「Before Long」と「Thatness and Thereness」のカヴァーあたりは特にお薦め。
いろんなヒトが書いているあたり。
*1:cf. 「サラバンド」(Wikipedia) 。
*2: 今日一般に演奏されるものとはいろいろ違いがあるけれど、セゴビアの編曲ということで、まぁ。
*3: ジュリアン・ブリーム編、セゴビア演奏。
*4: というか、これは原曲通り。ギター向けに編曲されたものとしては、YouTubeでは譜面は見当たらないしスティール弦になるけれど、3つのサラバンドの最初のものにはジョン・レンボーンの演奏 がある。
*5:cf. イダ・プレスティ - Wikipedia 、Ida Presti – The Art of Ida Presti - Studio Recordings, 1938/1956 (2012) - YouTube
*6: 本作は組曲の一部を構成するものとして作られたとかいう説があるとかなんとかだそうだけれど、いずれにしても作曲家の死によってそれも叶わぬ夢となった。ますます切ないな。