本日の備忘録/ルイーズ・グリュック(グリック)とかその他のうだうだ

 もう1週間過ぎて、すっかり時宜を逸してしまった話題ではございますがぁ、個人的な備忘録ということでまぁ。

 冒頭のヴィデオは、文学賞に限らず毎度おなじみのアダム・スミスによるノーベル賞受賞者への電話インタビュー。しかしまぁ、ルイーズ・グリュック*1(Louise Glück)、のっけからなんとなく面倒臭そうなヒトですね\(^o^)/

 

 全然知らない詩人さんだった。もちろん自分のこととしては読んだことのない書き手の文学賞受賞なんて、今回にかぎらずいくらでもあるテイタラクなのだけれど、TLを流れるtweetsを眺めていると、今回ばかりは、という方も多かったみたい。

 「風の」ヒトがご存知ないのならば、当方が知らないのはむしろ当然なんだろうなぁ。

 とはいえ一方で、この詩人さんを取り上げた報道を見ていると、ピューリッツァー賞だの全米図書賞だのの受賞歴があるし、多くの報道がその折の写真を取り上げている、アレ、なんていうんだっけか大統領が直々に勲章みたいなヤツを授与するの? 全米芸術人文なんちゃら勲章とかなんとかももらっているわけで、アメリカンなインテリさんならみんな知ってるぜ、的なヒトなんだろう。10年近い昔の記事の中にも下のようなものがあったし。

オスカー・ノミネートの映画『127時間』主演の俳優ジェームズ・フランコ(33)が、ニューヨーク大学の卒業式に出席し、映画製作の修士号を受け取った。しかし「お勉強大好き」のフランコは、この後も別の大学で博士課程を二つも習得する予定があり、彼の学位追求ママはまだまだ続くのだ。

(どーんと中略)

すでに取得済みの学士号一つ、修士号二つに加えて、さらに博士号を二つも目指す一方、この秋から大学院講師として教鞭をとることにもなっている。卒業したばかりのNYUで「詩を映画化する」クラスを担当し、題材はハンガリー系の米詩人ルイーズ・グリュックの作品を取り上げる予定だとか

「【イタすぎるセレブ達】「勉学オタク」ジェームズ・フランコがNYU修士課程を修了。しかしまだまだ彼の学位追求は続く…。」(TechinsightJapan、2011年5月23日、強調引用者)

 記事内容には立ち入らない。引用末尾のようにわずかばかりの説明とともに名前を持ち出されるところを見ると、まずは知られた名前の詩人さんなのかな、という印象を抱かされる。

 そういう、たぶんアメリカでは有名であるに違いない詩人さんであるにもかかわらず、書籍に収められている翻訳はといえば、

アメリカ現代詩101人集

アメリカ現代詩101人集

  • メディア: 単行本
 

の中に2篇だけという状態で*2、それではたしかに日本の読書家界隈で知名度が低いのも致し方なしか。

 発表日(日本時間)に価格が垂直上昇しているのがおわかりいただけるだろうか。

 念のために書いておくけれど、このグラフの示す価格は最低価格。これを書いている時点で出品者は5店あって、最低価格のところ以外は1桁違う価格になっている。

 結局のところ、

というようなところに落ち着いちゃうんだろうか。

 そのあたりにたどり着くと、連想はかつての「翻訳大国」としての日本は……みたいな紋切型の議論へと流れてゆくことになるわけだけれど、でもことが現代詩となるとすでに以前から翻訳が何でも揃うなんて結構な状態ではなかったんぢゃないかしらね? それはもちろん「詩」と称される文学作品ともなると各言語の特質と深く結びついているぶん翻訳との相性が……ほら、詩の本質ってば翻訳で失われるところのなんちゃらで、と、また別の紋切型へと……なんだけれど、けれど、翻訳詩集の類ってそもそもそんなに多かったわけでもないような気もする。

 翻訳モノの詩集と云えば、たとえば、ノーベル文学賞関連だって『サン=ジョン・ペルス詩集』『オクタビオ・パス詩集』みたいに「詩人名+詩集」、とどのつまりはグレイテストヒッツがせいぜいで、オリジナル・アルバムがまんま翻訳されるのはレアケースであり続けて来たんぢゃないか。ノーベル文学賞とは関係なくなっちゃうけれど、『物の味方』『迫る光』『亀の島』『ピサ詩篇』……みたいに独立した詩集が独立した翻訳詩集で出版されるというのは、少なくともパッと思い出せる限りでは例外中の大例外って感じぢゃないですか*3。詞華集みたいなのだって、『月下の一群』より後、『一群』に匹敵する影響力やネームヴァリューを誇るようなヤツに思い当たる節がないしぃ。そういうの、僕の不勉強のせいばかりではないんぢゃないかな。そうでもないですかね\(^o^)/。アイス見ません、ぢゃないよ相済みませんm(_ _)m。とにかく、そんなこと、小説だったらあり得ないでしょ?

 閑話休題

 本エントリを書き始めた時点で、ルイーズ・グリュックの詩の訳詩が複数読めるのは、木村淳子「ルイーズ・グリック : 花の声、人の声」(北海道武蔵女子短期大学リポジトリ)*4。日が経つにつれて、断片的な翻訳紹介も少しずつ増えているようではあるけれど、まだ今のところ読める数も最も多いみたい。「花の声、人の声」は詩人の紹介にもなっていて、受賞を機にちょっと読み始めてみたいかも、というヒト*5には好都合ということになるのかな。訳の善し悪しを喋々するだけの英語の素養がないので、そこいらへんは責任持てませんけれど、僕なんかが辞書首っ引きで原文を読むよりは138億倍くらいはマシなこと疑いなし。で、一読、まずうまい詩人さんなんだなというのがたぶんパッと見でわかっちゃうところ*6が大したもん。扱う題材もだれであれ関わる可能性のあるようなものだし、授賞理由なんかが触れていたように*7喩がうまいし、へぇ~、こういうヒトがいらしたのかぁ、というところか。

 これなら現代詩読まず嫌いのヒトもたぶん食指がピクピク動いちゃいそうで、版権を獲得している出版社さんがあるのかどうかは知らないけれど、あれば大慌てで翻訳者探しにかかっているところかも。もしなければ版権獲得競争の最中なのかも。要するに詩集として売れ行きがそこそこ期待出来ちゃうように思えた。ただし、今の旬を逃すとどうなっちゃうかはわかんない。なにぶん、現代詩のことだからなぁ。って、なんだか俗な感想ですね、ヤレヤレ。

 「俗な」といえば、昨日読んだ「ノーベル文学賞2020年、裏読み解説 今年の授賞の謎ときに挑む(鴻巣友季子) - 個人」(Yahoo!ニュース)が、受賞をめぐる諸事情の解説として面白かった。作品を前にしては、だからどうした、という気もしないではないけれど、話題にしやすい小ネタ、茶飲み話、床屋談義でシッタカをかますには読んでおいてもバチは当たらないんぢゃないかしら。当たるかな、下手を打って当たっても責任は持てません。相済みませんm(_ _)m。というようなことはどうでもよくて、アメリカでもグリュックの受賞はそれなりに意外な出来事だったらしい。へぇ~。

 

 英語がホイホイだとウェブで読めるアレコレは一気に拡大する。YouTubeで検索すれば、朗読や講演、対談・座談の類がゾロゾロ見つかりもする。そこいらへんは、google:Louise Glückからどうぞ。

 英語ホイホイなヒトなら、その気になりさえすれば即刻まとめて作品が読めちゃうというのはネットの時代のスゴいところだわね。

 

ふろく

悪の華 (集英社文庫)

悪の華 (集英社文庫)

 
荒地

荒地

 

 グレイテストヒッツ状況を思うと、オリジナル・アルバムで新訳が出続けている翻訳詩集ってのはスゴいもんだわね、と思わずにはいられない。日本の詩人さんだって、オリジナルの詩集がまんま出ているケースはそうそうあるもんぢゃないもんね。禅宗、ぢゃないよ、全集で読めればいいでしょ、ってもんでもないと思うんだけれどなぁ。そうでもないんですかね。うーん。

Ambarvalia/旅人かへらず (講談社文芸文庫)

Ambarvalia/旅人かへらず (講談社文芸文庫)

 

 二つの詩集、別々にしたら文庫には出来なかったのかな。『Ambarvalia』についてなら愛蔵版というのが出ている。復刻に近いような編集なのかな?

 朔太郎や中也みたいに著作権保護期間切れなら青空文庫で読めなくもないか。でも、文庫をジーパンの尻ポケットに突っ込んで……って具合にはいかんよなぁ。

 

 ドリームジャンボで一等でも当たったら、NRFのポエジー叢書みたいなヤツ、日本語シリーズで出してみたいもんですわ\(^o^)/。売れそうもないですかね。そうですかね。うー。

 

*1: リンク先はウィキp。今のところ日本語版の記述は少なすぎてお話にならないので、もちっと知りたいというヒトは日本語版から英語御本家版へとリンクをたどったほうがいいかも。日本語では「ルイーズ・グリック」と表記されることもある。で、信頼できる筋によれば、こっちのほうがどうも元の発音に近いらしい。姓に乗っかっているアクサンは、ハンガリー系ゆえとのこと。とのことなのだけれど、ここでは報道にしたがって「グリュック」としておく。

*2:cf. 「2020年のノーベル文学賞を受賞した“ルイーズ・グリュック”と、その作品について資料はあるか。」(レファレンス協同データベース)

*3: ってあたり、実際のところ元々日本語で書かれている近現代詩の詩集だってニタリヨッタリかもなぁ。オリジナルの詩集が版を重ねることがまず激レアだし、文庫化となると「詩人名+詩集」が大半だし……。

*4:via. 「2020年のノーベル文学賞を受賞した“ルイーズ・グリュック”と、その作品について資料はあるか。」(レファレンス協同データベース)

*5:e.g. ワシぢゃ、ワシぢゃぁ\(^o^)/

*6: とはいえ、英語で少しばかりチャレンジしてみると、散文還元的な読みでは結構難しいのもちょこちょこあって油断大敵、とどのつまりは詩そのものがわかりやすいというのとは別と思ったほうがよさそうなのだけれど。しかしまぁ、僕の英語力も読解力も怪しいことこの上なしだからなぁ\(^o^)/

*7: ……思うんだけれど、僕の英語聴き取りなんぞはいよいよ信頼が置けないしなぁ\(^o^)/