2021年2月6日のSongs

2021年2月6日

 6日視聴したYouTubeのPV、MV等から全53本。リストページは再生画面下のタイトルのリンクからどうぞ。

 

Xinlisupreme - I Am Not Shinzo Abe

 シンリシュープリームXinlisupreme)については「2021年1月8、9日のSongs」を参照されたし。本アルバムについては「XINLISUPREMEがニュー・アルバム『I Am Not Shinzo Abe』をリリース、代表曲“Seaside Voice Guitar”も再収録」(Mikiki)を当たられたし。記事には、以下のようなXinlisupremeからのコメントが紹介されている。

本作について、XINLISUPREMEは「このアルバムで私が述べたいことは、安倍晋三を批判する事に加え、日本社会にある『音楽に政治を持ち込むなよ』を変えることにあります。このアルバムがその為の議論になることを願っております」とコメントを発表。社会や政治状況に一石を投じる作品となっている。

 こういう議論では、僕の結論は決まっている。いささか雑なんだけれど、だいたい以下の通り。

 作品に何かを持ち込むかどうかでその評価は定まったりしない。したがってまた、持ち込んだかどうかにかかわりなく出来上がったものが面白いかどうかは別に問われるべきことだし、たとえば、政治を持ち込んで面白い作品が出来たとして、それが作り手の思惑通りに政治的な力を発揮するかどうかも別途検討を要すること。でもって、仮に思惑通りに力を発揮できなかったとしても、作品が愛好されることが妨げられるとは限らないし、力を発揮したからといって作品として優れているかどうかはわかったもんぢゃない。って、ひどく当たり前のことを書いているような気がしてくるのだけれど。

 

 なにがしかの現実と拮抗しうる作品を作ろうとする努力は、作り手の意図を超えた複雑さや面白さを作品にもたらすことがある。たとえば、ジョナサン・スウィフトガリヴァー旅行記』が興味深い作品足り得ているのは、純粋な綺想譚、幻想譚として書かれたからではなく、政治的風刺として書かれたからではないかと考えてみることは充分可能だろう。直接的な批判ではなく持って回った風刺という方法を選んだことが、思いもよらぬ世界設定や話の展開をもたらしたと考えることも出来るんぢゃないか。そして、それ自体が興味深い読み物として『ガリヴァー旅行記』を成り立たせていやしないか。もちろん、現在でも政治的な風刺作品として読むことも出来るが、しかし、少なくとも今日の日本の読者は、書かれた当時のイギリスとアイルランドの関係を調べないとそういう読みはできない。調べものは、作品が面白いからこそ行われるのであって、ツマラナイんだけれど調べてみようという殊勝なヒトとなると、うーん、学者・研究者さんの類以外にはなかなか見つからないんぢゃないかしら。つまり、調べなくとも面白く読んでいるから世界中に広まって今ではドロップスなんぢゃないか。とすれば、政治的には涙を流したかも知れないスウィフトの意図とは離れたところで成立した面白さを今日只今の読者は味わっているってことになる。しかし一方で、読者には見えにくくなっているにしても、政治を作品に持ち込もうとしなければ、その面白さは決して成立しなかったはずのものなのだ。

 人間の想像力は、たいていの場合、漠然と思い込まれているよりも貧弱なものだ*1。純粋な想像力だけで構成されていてなお複雑な面白さや予想外の展開を持つ作品は、優れた天才か極めてレアな偶然かに依らなければ成立しない。複雑で予想外のアレコレを含む面倒臭い現実と拮抗した作品を生み出そうとする努力は、しばしば作品そのものに複雑な構成と予想外の展開をもたらす力になる。その結果、たとえば現実政治を変革するような力になるかどうかはさておき、思いもよらぬ形で作品を興味深いものにすることもあり得るだろう。そういう意味で、ただ頭の中だけで構成された純粋な作品よりも政治であれ宗教であれ現実的な葛藤を持ち込むことは、傑作を生み出す力ともなることがあるというのは間違いのないところ、ぢゃないかなぁ。

 そういう受け止め方がアーチストさん的に気に入るものかどうかはアレだけれど。でも、「I Am Not Shinzo Abe」、現実的な力を発揮したかどうかはわかんないけれど、アテクシはイカす音楽だと思うよ。

I Am Not Shinzo Abe

I Am Not Shinzo Abe

  • アーティスト:Xinlisupreme
  • 発売日: 2018/10/16
  • メディア: CD
 

 正直なところ、どなたの訳がいいのか充分に読み比べた経験がない。というわけで、挿絵が趣味に合う福音館文庫

 シッタカをかますだけなら、他人様の語る話題についてゆくためだけなら、「ガリヴァー旅行記」(Wikipedia)でも何とか間に合う(かな?)。

 

Jackie Venson - Acoustic jams before my virtual party tonight!

 何のヴァーチャル・パーティーかといえば、ご本人ジャッキー・ヴェンソン(Jackie Venson)*2の誕生日パーティーということみたい。ヴェンソンは1990年2月5日、テキサスはオースティン生まれのシンガーソングライターにしてギタリスト。ここでは生ギターを弾いているけれど、基本はエレキのヒト。YouTubeであれこれ漁っていると、ピアノでドビュッシーを弾いているヴィデオに出喰わしたりする。シーケンサもお手の物みたい。その他細かい話は「Jackie Venson」(Wikipedia)*3を参照されたし。出身地界隈を超えての評価が、少なくともネットではなかなか見当たらないのだけれど、もうちっとくらい広い範囲での高評価があってもいいんぢゃないかしら。

Joy

Joy

  • アーティスト:Jackie Venson
  • 発売日: 2019/05/24
  • メディア: CD
 

 まずこのへんぢゃないかな。ライブ・アルバムも出ているけれど、ライブの演奏も安定していて、スタジオ盤のほうが音作りの丁寧さに勝るぶん聴きでがあるかな、というところ。「Joy」(YouTube)で一通り試聴できる。

 

*1: 作品をめぐる話ではないけれど、現実に対するヒトの想像力の貧しさについては、「本日の備忘録/VRと、想像力とかエンパシーとか」でちょろっと触れたことがある。

*2: リンク先はオフィシャル・サイト。

*3: Wikipedia日本語版にはまだ項目がないみたい。