本日の備忘録/文明の賞味期限とか消費期限とか耐用年数とか

 今さらな話かもしれないけれど。

 上のヴィデオの件で何より驚いたのは、考えられていた耐用年数は2023年にやってくるものとされていたことだ。だいたい耐用年数なるものの正体は食品で云えば賞味期限みたいなもので、それが尽きたからといっても即刻どうにかなるものではなくて、消費期限切れでなければまだまだ喰えない代物というわけでもない、多少の味の劣化さえ気にしなければ喰い物としての役割は果たせるものと半ば以上は決まっていて、だから原子力発電所みたいに40年持つ予定のところを60年持つということに変更したところでへっちゃらだったりするわけで、そういう思い込みがあったところに賞味期限も尽きないうちに食中毒が発生したような具合なのが今回の水管橋崩落だろう。

 六十谷むそた水管橋の話、何も和歌山の特産品の事件・事故というわけではなくて、たとえば運河の類がうヂャうヂャ流れる東京のことを思い浮かべてみれば、耐用年数の話は追々それなりに問題になるのだろうとの見当はつく。ちょいと都内を歩き回ってみれば、水管橋の類は結構な数存在していることがわかる。中には錆の色がくすんだ塗装の上に流れた跡が目につくものもある。さすがに六十谷ほどの規模のものは滅多ないのだけれど、デカイのが1本よりコマかいのがウヂャウヂャそこいらじゅうにあったほうが、リスクの分散にはつながるのかもしれないが、メンテの面倒が上回る可能性だってあるだろう(ないですかね?)。

 こういう社会資本というか文明というか、そこいらへんのメンテナンスは出来ていて当たり前、問題が生じないというだけではだれも褒めてくれはしない。代わりに万博であれIRであれ、何かしら派手な俗ウケする目玉をぶちあげないと票が集まらない。いきおい、地味な割には金もかかるメンテナンスは後回しということにどうしてもなってしまう。今回の六十谷のように、賞味期限そのものからして見直しの必要な怪しいものだったかもしれないということになったとしても、再検討して正すなんぞという面倒に手を出そうと考える向きが力を得て大活躍することなど、まずは望み薄。そういう理屈が揺るがないかぎり、今回のような賞味期限切れ前の食中毒みたいなヤツは、今後全国各地津津浦浦で小さいのから弩デカいのまで、いろんなレヴェルでボコボコ生じること確実と見ておくべきなんだろう。なんて書いていたら、「地震で市原市の水管橋破損 経年劣化でボルト腐食が原因か」(TBS NEWS、YouTube)ってな報道が……。耐用年数の話は出て来ないが、

 この水管橋は1980年に設置され、耐震補強も済んでおり、地震当日(7日)の日中に点検した際には異常はなかったということです。県によりますと、ボルトが経年劣化によって腐食していたため、地震の揺れにより破損したとみられるということです。

とのこと。耐用年数を過ぎているのであれば、さすがに点検は丁寧に行われ、見つからなかった経年劣化の現れもひょっとすると見つかっていたかもしれない。そうならなかったのは、やはり耐用年数までなにほどか余裕があると思われたからではないか(というのは素人の当て推量に過ぎないですかね?)。

 と、そういうふうに理屈を捏ね繰り回すなら、案外今さらな話と決まったものでもない。

 

ふろく

 そういえば、と思い出したのがISSのこと。あれ、元々は2016年あたりが耐用年数というか運用終了というかの予定だったはず。ということでググってみると、「国際宇宙ステーション運用を24年まで延長、NASA」(AFPBB News、2014年1月9日付記事)に出喰わすことになる。

 NASAの担当者によると、ISSの運用期間が延長されるのはバラク・オバマBarack Obama)政権下で2度目。耐用年数の面では、ISS本体や搭載機器類は2028年まで使用可能だが、運用・保守には年間30億ドル(約3150億円)の費用がかかるという。

 そうかぁ、14年の時点ですでに2度目の運用期間延長だったのか。耐用年数そのものは2028年までのゆとりがあるとはいえ、それにNASAが弾き出した耐用年数なら賞味期限として、六十谷の水管橋のそれよりは遥かに信頼が寄せられそうな気がしないでもないとはいえ、以降、ISSの後継計画の話は、こちらの不勉強のせいもあるのだろうけれど、耳目にしたことがない。そうなってくると、俄然気になって来るのが中国の動向。

 神舟13号の打ち上げ、宇宙ステーションとのドッキング成功を報ずる今朝の動画。これでまた中国の宇宙ステーション計画は1歩前進ということになる。現在のISSの後継が登場するまでの間、この調子で宇宙開発が進むとなると中国のみが宇宙ステーションを持っている国ってことになるのかもしれない。アメリカであれ中国であれ、日本にとっては他所の国であることに変わりはなくいずれにしたところで思うがままにはならないにしても、中国がアメリカほど宇宙ステーションを他国に開いた形で利用させてくれるわけはなさそうに思える。そのへん、本邦の都合はどうなってくるのか。

 なんてなあたりは、心配している声があんまり聞こえて来ない。聞こえて来ないということは、そんなことに気を揉むのは杞憂に過ぎないということなんだろうか。まぁ、僕なんぞが心配しても安心しても、いずれ世間様には毛ほどの意味もないんだけれど\(^o^)/、そこいらへん、識者さん界隈はどうご覧になっているのかしら。

 

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