今朝見た夢。
柄は思い出せないが、紫がかった灰色の地味な和服を着た祖母と草原のただ中舗装されていない乾いた土の道を歩いている。
――きれいやねぇ」と祖母。
さらに振り返って、
――きれいやねぇ」と祖母。
見れば、ところどころに雪の積もった金剛生駒山地があり得ない近さに迫って
――写真撮らなあかんね」と祖母。
道はいつの間にか舗装されていて、道幅も広がっている。祖母は一人でやって来るヒトをさっさとつかまえて、コンパクトデジタルカメラを手に操作方法の話をしている。そのすぐ脇をエメラルドグリーンのミゼットが走り抜けてゆく。危なっかしいなぁと思いながら眺めていると、祖母が手招きし始める。それに応じようと、さて、そうだ荷物を、と持ってきたはずのない荷物、見覚えはあるけれどどういう来歴のあるモノだったのか思い出せない皮革の鞄と、何が入っているのかこんもり膨らんだ布地の鞄を道端から拾い上げ、祖母の方へ向かう。
どういうわけか、すでに写真は撮り終えられており、祖母のカメラのモニタを覗くと、海をバックに祖母と私が並んで写っている。そして、画面右下には見覚えのない黒い毛むくじゃらの得体の知れないナマケモノとタヌキを掛けあわせたような動物が一匹。頭部の形はタヌキによく似ているのだが、前肢の大きな爪は明らかにナマケモノのものだろう。
――これは一体何なんでしょうね?」
と祖母に語りかけようとすると、すでに祖母はどこにも見当たらない。見上げるとさっきの連絡船が山地のほうへと空を飛び去っていく。
その後のことはよくわからない。頭にはもう少し細部のアレコレも残っているような感触があるのだけれど、どうも記憶そのものではなく、後になって頭が勝手に付け加えたもののように思える。
いつの間にか寝落ちしていて、凍えきった躰で目が覚めた。喉が痛い、躰の節々も痛い。そういう痛みの感覚が夢の雰囲気と重なって、厭な寝覚めだった。
ミゼットが夢に出て来るのはひさしぶりのこと。なんで今頃出て来たのだろう。夢の中というばかりではない。あれほど街中を走っていたのが今ではまず滅多見かけない。見かける折があれば、夢の中以上にずっとレアだということになる*1。