本日の備忘録/狐博士入門篇、 Will Stephen - How to sound smart in your TEDx Talk

 2015年に公開されたものだけれど、TLで流れて来たtweetが気になって*1探して見つけた。日本語字幕も利用できるようになっている*2

 「その『わかりやすさ』、ちょっと疑ってみよう」hatebuで紹介した"Dr. Fox Effect"にどうしたって連想は飛ぶ。

 大学生を相手に、一つのクラスでは、内容は支離滅裂、しかし話術、非言語的メッセージは巧みに、俳優が扮するドクター・フォックス(キツネ博士)氏が講義します。別のクラスでは、理路整然と、しかし話術、非言語的メッセージは控えめにしたドクター・ジャパン氏が講義します。講義終了後に、学生にそれぞれの先生の授業を評価してもらいます。

 どちらのほうが、いい評価を受けたと思いますか。

 ドクター・フォックス氏のほうです。なんと、内容についての評価点もドクター・ジャパン氏よりよかったのです。これは、ドクター・フォックス効果として知られています。内容さえよければ、発表のしかたはどうでもいいと考えがちな日本人には、ドクター・フォックス効果は教訓的ですね。

 ちなみに、授業評価の観点には、内容のよしあし、講義のしかたの巧拙、さらに教師の熱意の三つがあります。ドクター・フォックス効果は、内容だけよくても学生はついてこないという教訓を、教師に投げかけています。

(海保博之『学習力トレーニング』岩波ジュニア新書)

 これだ。常連さんなら覚えていらっしゃるのではないかしら。"How to sound smart in your TEDx Talk"は謂わば「狐博士入門講座」みたいなものになるのかもしれない。

 ドクター・フォックス効果自体は、その後、当初考えられていたほど強力なものではなく、影響範囲は割と限定的なんぢゃないかとの研究も出て来ているらしい*3けれど、それでも、ということはやっぱりあるんぢゃないかなぁ、というところかな。

 

 ググっているとこの講演内容の分析解説記事みたいなものも見つかった。「頭良さそうにTED風プレゼンをする方法 by ウィル・スティーヴン|プレゼンテーション必見動画第4回」(プレゼンテーション・カレッジ)hatebu、巡回先というわけではないので、どういう方が書いていらっしゃるのかは詳らかにしないけれど、参考になる話も多そうだから合わせて読んでおくといいかもしれない。

 

 以下、「必見動画」のほうで気になったことを2つばかり、おまけ的に。

え?ポーズに強い・弱いってあるの?という方は「パワーポーズ」というのを知るとこれからプレゼンする時に緊張しなくなるかもしれません。要するに、腰に手を当てて胸を張るというものですが、実はこのポーズをとるだけでテストステロンというホルモンの分泌が増えて、よりエネルギッシュになることが科学的に証明されています。

とある話、これもTEDの講演に同じ話題に触れたのが出ていたよね。ひょっとしたら、「必見」でも他ページで取り上げているのかもしれない。「Your body language may shape who you are | Amy Cuddy」(TED、YouTube)hatebu、現在はどうなんだか知らないけれど、一時はTEDの公開したヴィデオ中最多の再生回数を誇ったとかなんとかぢゃなかったっけか? ほとんど感動的といっていい講演、自分のプレゼンに自信がないという方には、たぶん打ってつけなんぢゃないかしら*4。ご覧になっていらっしゃらないなら、日本語字幕も利用できるようになっているんだし、是非*5

 あと、これはちょっとどうなんだろう、と思ったのが、

似たような話は「キーフレーズ」もそうです。TEDのプレゼンを解説した本の中には、「3ワードから12ワードまでの短い言葉に収めること」、「韻を踏む、もしくは言葉を反復することで音楽を聴いているようなリズムがあること」とさも「それっぽく」解説していますが、このスティーブン氏のプレゼンを見るとそういうのって結局「頭良さそう」にTED風プレゼンをするための表面的なものだと気付かされます。4’20あたりで、「ワガワガ」、「チップ・トリップ・マイドッグスキップ」と、正に反復のキーフレーズを使っていますが、これって何も意味がない言葉をつなぎ合わせただけですからね。

というところ。素人の一言居士的云いがかりということで、お許しを願うとして少々。音韻の工夫は実は説得力につながるという話もある。『影響力の武器』だかその実践篇だかに、音韻のノリのいい文句のほうにヒトは説得力を感じるという実験例が出ていたはず*6。そもそも、この講演はもっともらしい見かけその他を戯画化して話しているのだから、つまりことさら表面的でクダラナイものに見えるように演じているわけだから、表面的でクダラナイとのみ見てしまうのはどうなのかな、読み筋がおかしいんぢゃないかな。音韻の工夫、ちゃんとした論理の組み立てが前提にあるなら、さらなる説得力を加える努力として馬鹿にできない可能性はあるんぢゃないかしら。

 

 と、いうあたり、いずれにしても毎度注意を喚起しておきたいのは、プレゼンテーションする側のコツの類は、いろんな話に惑わされないコツとしても捉え直せるということだ。「その『わかりやすさ』、ちょっと疑ってみよう」hatebuにも書いたことだからクドクド繰り返すのは止すけれど、このへん、プレゼンテーションの観衆ばかりでなく、講義を受ける予備校生や大学生、あるいは立候補者の政見演説を聴く有権者としてだって知っておくに若くはない知恵ということになるんだと思うなぁ。

 

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 版が改まってからもうすぐ5年になるというのに、売上297位というのはなかなかぢゃないか。びっくり。

 

 TEDといえば、TED Talksでの講演を掘り下げ展開するTEDブックスというシリーズをご存知かしら。主題的には当然興味深いのだけれど、どうも身近では知らないヒトが多いような気がする。というわけで、ついでながら、「TEDブックス」のアマゾンでの検索結果など、ことのついでに。

 

*1:cf. こむ on Twitter: "さっき見てた「TEDでなんかすごいこと言ってる風にプレゼンする方法」っていうの、途中で落ちて探せなくなった"

*2: 1.再生前にポーズして、2.再生画面右下の「CC」ボタンをクリック、3.「CC」ボタンしたに赤い下線がついたことを確認し、4.歯車アイコンをクリック、5.現れたメニューから「Subtitle/CC」を選び、6.メニューから「Japanese」を選択する。/ついでながら、なお著作権まわりがどうなっているのかわからないけれど、最初から日本語字幕を利用しやすくした YouTubeヴィデオが、後で紹介している「頭良さそうにTED風プレゼンをする方法 by ウィル・スティーヴン|プレゼンテーション必見動画第4回」(プレゼンテーション・カレッジ)hatebuに掲載されている。

*3: そういう旨の、出典論文へのリンク付きtweetをちょっと以前に見かけてファボっておいたはずなのだが、ふぁぼろぐに当っても見つからなかった。削除されちゃったのかしら?

*4: 実は旧「与太」でも取り上げたことがあったのだけれど、記憶にとどめて下さっている方いらっしゃるかしら。

*5: ただ、ポーズをとるのはプレゼン中ではなくて、プレゼン前ぢゃなかったかな。

*6: 『武器』、引越の折に紛失したらしくて今手許にない。引用その他具体的紹介ができず申し訳ない。僕が読んだのは第2版なので、現在出回っている第3版に同じ話が登場するかどうかは未確認。

本日の備忘録/タイムラプスビジョンの「ぱらぱらミクロ」シリーズ、これは欲しくなるわ。

 あぁ、こういうの、いったん出ちゃうとなんでこれまでこういうのが存在しなかったのかが謎になっちゃう種類のアイディアだわね(゚∀゚)! 間違いなく子どもは喜ぶだろうけれど、オッサンだって面白がっちゃうぞぉ、こりゃ。

 DVDとかアプリとかぢゃなくて、今になってのパラパラアニメというのが、別にアナクロニズムとは感じられず、独立したものの見方を示しているみたいに思えて来るのがおもしろい。タイムラプス動画になっているという特殊性もあるのかしらね。でも、キャット空中三回転とかミルククラウンとかのハイスピード撮影動画なんかでもきっと欲しくなるんぢゃないか。いや、それミクロぢゃないし版元の名前からするに高速度撮影はあり得ないか\(^o^)/。いずれにしても、そういうのも含めて、理科の教科書や参考書のページ見開き上下左右四隅に文科省検定済みパラパラアニメが登場してもバチは当たらないかもなぁ。

 

 売れてさらにシリーズが続くといいなぁ。

 

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ぱらぱらミクロ 02 細菌の増殖 インフルエンザ菌
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 「インフルエンザ菌」との表記に違和感を覚える方もいらっしゃるんぢゃないかと思うのだけれど、そういう場合は、「インフルエンザ菌」(Wikipedia)hatebuなど参照されたし。

ぱらぱらミクロ 03 パンに生えたカビ
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堺貼り紙・看板散歩/続・天牛堺書店北野田店万事休す篇

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4月21日

 おわかりいただけるだろうか。画面右下、不動産屋の案内が剥がされて両面テープが残っている。

 ケチケチせずに「堺貼り紙・看板散歩/天牛堺書店北野田店万事休す篇」hatebuのときの写真も紹介しておくと……。

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4月13日

 もちろん、イタズラで剥がされたのかもしれないし、通行人が足許をうっかり引っかけて剥がしちゃったのかもしれない。でも、ひょっとすると次に入る店舗が決まって連絡先を掲示しておく必要がなくなったということかもしれない。ここは駅前ビルのヒトがよく通る場所だもの、どのような店であれひと通りちゃんとしていれば何とかやっていけるくらいのところぢゃないか。賃料がどれくらいだか知らないからホントのところはわからないけれど、素人目にはとりあえずそう見える。

 

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4月21日、ご近所標本木

 ご近所の桜はもうすっかり葉桜だ。いつの間に準備されているのか、花が散り始めるとただちに葉は広がり始める。花の芽は年を越す前から膨らみ始めているのが目に見える。ずっと冬の間をその姿態で過ごしようやく束の間の花の時期を迎える。葉はその兆候を感じさせない。いつの間にやら秘密裡に準備万端。

 そういうふうに見てみると、桜にとって花とはずいぶんコストの嵩むものというふうに見える。たいがいの場合生存には不可欠とはいえない部位を、葉が落ちて日も弱い、光合成も思うに任せぬ季節に長期にわたって育み続けなければならないというのは、まぁひたすら面倒臭そうだわね。

 別に天牛堺書店を巡って何かの寓意があるわけぢゃないです。単なるおまけ。

 

立ち読み課題図書、その他

 kotoriko先生本待望の単著。

 

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 中身もおもしろそうなのだけれど、それはさておき、《「脳は予測装置であり、その予測能力は、絶え間なく生成しているさまざまなリズムから生じる。」2006年に刊行された原著は、かつて“ノイズ”にすぎないとされていた現象の見方を一変させ、すでに現代の古典となっている。本書はその待望の邦訳》(強調引用者)との売り文句、干支が一廻りするかしないかで古典になっちゃうというあたり、脳科学の類の日進月歩だか秒進分歩だか具合を如実に表わしているってことになるんですかね。

 

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 今、ぼそぼそと読んでいるところ。実は天牛堺書店北野田店で落手したのだった。新本なら『金沢・酒宴』(講談社文芸文庫)あたりがギリギリか。

 ケッタイな小説、擬似仙郷小説みたいなのかしら、何にせよ、話に出て来る忍者寺よろしく上がったり下がったり行きつ戻りつしてなかなか先に進めない。

 

本日のSong/ I Think It's Gonna Rain Today

 何となく、今日はそんな日といえばそんな日か。

 Randy Newmanの原作でいろんなヒトがカヴァーしているけれど、僕はSidsel Endresen & Bugge Wesseltoftによるこれが好きだな。

 

 メロディーが賛美歌っぽくなくもない作りのようでもあって、歌詞にノアの方舟のことを重ねて受け取りたくもなるがどうか。

Broken windows and empty hallways,
a pale dead moon in a sky streaked with grey.
Human kindness is overflowing,
and I think it's gonna rain today.

*1

 背徳三昧の退廃的な風景の中、悪徳が溢れて雨が降り出すのではなく、荒涼とした廢墟めいた光景の中、human kindnessが溢れ返って雨が降り出しそうだとはどういうことか。

 少し斜に構えて強がりつつ、自分の孤独を裏返しにして世界を見つめるような目のあり方?

 

 歌を書いた当の本人によれば、

This might have been 1964 or ’63. I may have had the first two chords of the tune, where the voice starts. I have always loved those vanilla-kind of chords, straight-ahead Stephen Foster. And once I had a style, I crystallized it: The music is emotional – even beautiful – and the lyrics are not. The honest truth is the song bothered me because of the darkness – it felt sophomoric, too maudlin. But Judy Collins did a great version [in 1966]. UB40’s [1980 cover] was interesting. And I played piano for Barbara Streisand when she recorded it [in 1970]. Boy, it’s real good. She has a hell of a voice.

Randy Newman: My Life in 15 Songs – Rolling Stonehatebu*2

とのこと。ご本人自身も2度にわたって録音なさっていながら*3、「sophomoric, too maudlin(未熟だし、感傷的にすぎる」というその酷評はなんですねん感ありますね。カヴァーしてくれたヒトたちを褒めるために敢えて腐したということなのかもしれないけれど。

 

【付記】本エントリは、本来2015年01月26日の復旧エントリになるはずだったのだが、いろいろおバカな勘違いなど正しているうちに復元復旧の域をハズレた、実質的には書き直しになっちゃったというわけで、本日(2019年4月19日)のエントリとする。

 

Night Song
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Sidsel Endresen & Bugge Wesse
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 MP3版もある。バラ売りも当然あり。冒頭ヴィデオのジャケ写にある「Global Magic」は、ACTレーベル・アーチストさんたちのオムニバス。