本日のGuitarメモ/サラバンド、サラバンド
プーランク「サラバンド」の聴き比べ用のプレイリストを作ってみた。ヴィデオの音量はそれぞれまちまちなのはちょっとどうしようもないのだけれど、それでも聴き比べはたいていおもしろいものだな。
12の演奏の選択はいたって気分的なものにすぎない。再生画面に示される再生時間の長いものから短いものへと並べてある。表示される時間は演奏前後の無音部分を含むものであり演奏時間を正確に示すものではない。中には、2番目のナルシソ・イエペス(Narciso Yepes)のように本来ないはずの反復を含むために時間が長くなっているような演奏もある*1。なんだかんだ、いろいろいい加減なプレイリストであるm(_ _)m。
最長が3:56、最短が1:58。冒頭のの演奏ヴィデオのように演奏が始まるまでの沈黙が少々長いものもある。とはいえ、さして複雑な構成を持つとは思えない本作においてはちょっとくらいびっくりしてもバチは当たらない違いなんぢゃないか。最初の演奏は最後の演奏のざっと2倍の時間になるわけなんだから。
テンポの選択以外にも、演奏の抑揚、左手の運指や和音のロールも思いの外バラバラだし、どうしてそういう弾きにくい運指をわざわざ選ぶのかよくわかんないのもある。たとえば、1小節目最後のハーモニクスは普通に考えて、左手指で開放6弦12フレットに触れて出すものだろう。しかし、中には人工ハーモニクスよろしく右手人差し指で6弦12フレットに触れ同じく右手親指で弦を弾く奏者もゐたりする。
君ら、何を考えてそんなふうに弾くの?
冒頭のプレイリスト中最速だった演奏を収めているアルバム。
単独で耳にしていたときは、サラバンドのテンポもそうは奇異に感じなかったのだが、聴き比べてみるとほとんど投げやりなまでの速さだわね、という気がしてきちゃった\(^o^)/。
大バッハ、クープランから、プーランク、バリオスに至る、イイ感じのギター独奏集。YouTubeの「Eliot Fisk - Topic」のプレイリストでアルバム全体が試聴できる 。しかしなぁ、フランソワ・クープランとかフランシス・プーランクとか紛らわしいわ\(^o^)/\(^o^)/。
本日の教えてくん/サラバンド、サラバンド、どうしてお前はサラバンドなの?
なんだけれど、あれ? っと思うよねぇ。サラバンドといえば三拍子の舞曲と相場は決まっているはずなんだけれど*1……。
たとえば、
という具合にバッハは三拍子だしぃ、
ヘンデルも三拍子でもって、
ピアノ譜になっちゃったけれど*4、サティだって三拍子なのだ。
ところが本作はのっけから五拍子だもんね。五拍子×2、三拍子×2で、四拍子×2……。「マス・ロック(math rock)」なら聴いたことがあるけれど、まさか「マス・サラバンド」ってな具合にゃまいりますまい。
句またがり的に拍をズラしたり勝手にまとめ直したりってわけにもいかないよねぇ。たぶん、何か楽典上の基礎知識の欠如か何かのせいで僕にはわかんないだけってなところなんだろうけれど。うー。
ついでながら、本作、譜面中には何箇所かハーモニクスの指定があるのだけれど、どういう効果を狙ってのものなのかもわかんない。音色を変える意味はなさそうだし、左手の運指が楽になるわけでもない。YouTubeに上がっているプロ・アマ問わないヒトたちだって多くの場合、無視して普通に弾いていたりする。どうなっちゃってるんだろう? う~ん。
チャーミングだし難しい指使いが求められるわけでもない。スティール弦のギターでも問題なく演奏できそう。だから、自分のレパートリーに加えてみたいところだけれど、解釈どうこう以前に入口で躓いて転んだまんま起き上がれない感じ>┼○ バタッ
譜面の最初のページの最上部に「To Ida Presti」と献辞がある。イダ・プレスティは当時の代表的な女性ギタリストにして作曲家*5。彼女にこの作品は献呈されているわけだけれど、プーランク自身作曲後(1960年)間もなく63年に亡くなっているし、67年にはプレスティも肺がんでこの世を去ってしまい、多忙な彼女に演奏される機会はなかったのだそうな。プーランク唯一のギター曲だというのに*6、なんかしら切ない話だわね。
立ち読み課題図書、その他
僕がプーランクのサラバンドを知ったのは、このアルバムの1曲目のピアノ演奏によってだった。実際のところ、サラバンドがなにがしか重厚な雰囲気を不可欠とするものであるなら、ギターよりピアノの音色のほうがふさわしいということになっちゃうかもなぁ。火事で消失してからというもの、聴き直す折を持たぬまま過ごしてしまったけれど、頭の中で再生してみるかぎりそのへんの印象は変わっていない。
収録作品はオリジナル、カヴァーとも気持ちのいいものばかりだけれど、坂本龍一の2作「Before Long」と「Thatness and Thereness」のカヴァーあたりは特にお薦め。
いろんなヒトが書いているあたり。
*1:cf. 「サラバンド」(Wikipedia) 。
*2: 今日一般に演奏されるものとはいろいろ違いがあるけれど、セゴビアの編曲ということで、まぁ。
*3: ジュリアン・ブリーム編、セゴビア演奏。
*4: というか、これは原曲通り。ギター向けに編曲されたものとしては、YouTubeでは譜面は見当たらないしスティール弦になるけれど、3つのサラバンドの最初のものにはジョン・レンボーンの演奏 がある。
*5:cf. イダ・プレスティ - Wikipedia 、Ida Presti – The Art of Ida Presti - Studio Recordings, 1938/1956 (2012) - YouTube
*6: 本作は組曲の一部を構成するものとして作られたとかいう説があるとかなんとかだそうだけれど、いずれにしても作曲家の死によってそれも叶わぬ夢となった。ますます切ないな。
本日の備忘録/On AI: Are machines learning to be racist?
このところ、ちょこちょことAIをめぐる気になる報道が相次いでいる。上のヴィデオはその第1弾みたいなやつ。
云われてみればなるほどモノ。深層学習型の人工知能となると、すでにあるデータから判断の方法を生み出すことになる。採用人事に当たるAIの開発には過去の採用時のデータが用いられる。となれば、元々データに潜むヒト由来のバイアスは排し得ない。
云われてみればなるほどというか、気づかなかったのがむしろバカみたいな話なんだけれど、あがっているアマゾンでの例など見ると、そっか、もうそのへんはリアルな話になっているわけで、気づかなかったのは本当にお馬鹿さんですみませんm(_ _)m、というところか。
ことは採用人事のみでは済まない。ヴィデオにあるみたいに裁判にさえAIが用いられることになれば、いよいよ大変だ。このあたり、なんとなくAIによるほうが人間的なアレコレのバイアスを免れた判断が期待できそうなイメージがあるぶん、あるいはヴィデオにもあるように開発者さんもそのへんをウリにしているぶん、油断大敵火がボウボウ、意識的に注意を払わないともっともらしさを纏った人権侵害が罷り通ることになりかねないのかもなぁ。鶴亀、鶴亀。
- Apple News algorithms pick more celeb stories than human editors, study finds | Apple | The Guardian
まだちゃんと読んでいないのだけれど、被る話だよね、たぶん。
- IBM、「偏見」を基にした顔認証技術の開発を中止へ - BBCニュース
こういう話が企業側から出て来るというのは、記事中にある種々の批判を考えにいれても大したことぢゃないですか。本邦だとどうなんだろう、先端技術の領域で老舗的な大企業が、上っ面だけでも世間様の流れに逆らうかのように見える倫理的な態度を表明するってなこと。ないわけはないと思いたいのだけれど、不勉強でなのかどうか、パッと思い起こせるところがない。
- 「まさにブラックボックス」AIによる人事評価 情報開示求め、日本IBM労組が申し立て - 弁護士ドットコム
4月4日の記事とちょっと古めだけれど。
申立書などによると、日本IBMは2019年8月14日付けで、IBMが開発したAI「ワトソン」によって従業員を評価して賃金を決める仕組みの導入をグループ社員に通達した。
組合は繰り返し、団体交渉を通じて、AIの学習データや、AIが評価者である上司に向けて表示するアウトプットの開示を求めたほか、日本IBMが人事評価の要素として就業規則に定める「職務内容」「執務態度」などをAIがどのように判断するか説明を求めてきた。
その求めに対して、同社はAIが上司に示す情報は社員に開示することを前提としていないなどと主張し、団体交渉を拒否した。
登壇者らは「AIの市場シェアナンバーワン」を標榜する日本IBMにおいて、AIの導入の判断が議論されず、検証もままならない状況だとして、同様の事態が広がることに警鐘を鳴らす。
アメリカなら昨年のThe Algorithmic Accountability Act(アルゴリズム説明責任法)*1か何かで調査と説明が求められるべきところになるか、なるところに極めて近しい案件のように見えるが、どうか。というか、そうか、日本ではこのへん規制する制度が今のところないってことなのか。う~ん。
記事にはさらに以下のような指摘も取り上げられている。
今回の救済申し立ては、AI利用について情報が誠実に開示されない不透明な状況の改善が理由である。他方、会見で関心を集めていたのは、AIの人事評価利用の「是非」だった。
登壇者らの立場は「現段階でAIは不完全」という考えだ。たとえば、AIが差別を「学習」することで、従業員に対して差別的なアウトプットになりかねないことを懸念している。
おまけ/ロボット利用費用が人件費を下回る日
紹介されているロボットは、まだまだヒト並みの仕事が出来るのかどうかわかんないけれど、とはいえ、毎月のレンタル料金が1000ドル、つまりは10万円とほんのちょっととなると、人件費並み、もしくはそれを下回るコストで使える日がやって来ちゃった、あるいはやって来る日が迫って来たということか。「本日の埋草/The Rise of the Machines – Why Automation is Different this Time」 で取り上げたような話が俄然リアルなものになって来たってことか。
こうなってくると、「『ベーシックインカムは人を幸福にする』と2年間に及ぶ実験で判明」(GIGAZINE、5月11日) というフィンランドでの試行の結果や、「スペイン、ベーシックインカムを承認 コロナによる貧困に対応」(AFPBB News) の先行きもますます気になってくるなぁ。
71のレヴューの平均、星4つというのはなかなかぢゃないですか。
*1: 冒頭のヴィデオでも(英語でだけれど)言及されているヤツ。訳語として定まったものになっているのかどうからへんはよく知らない。cf. google:アルゴリズム説明責任法
本日のSong/Lucy Rose - Question It All
Lucy Rose、ひさしぶりの新曲公開。まいったなぁ、やられちゃったな。声質の魅力や歌の組み立てのむやみにシンプルな美しさは云わずもがなのこととして、音作りの、やはりシンプルだけれど抑揚に富んだところなど申し分なし。初めて耳にしてそれなりの時間が過ぎたのだけれど、当初からの好印象はまったく損なわれないままだ。やられっぱなし。
ただし、見ただけではわからないのがヴィデオ映像の方。どういう具合でこういうものになったのか、そこいらへんの事情は以下の通り。
After deciding I wanted to release these songs, I thought about maybe trying to make a music video for one of them. I thought that it would be good to pair the song with something that was uplifting in this strange time and hopefully made some people happy.
— lucy rose (@lucyrosemusic) May 20, 2020
I put out a post asking you all to send me a video of something that is helping you through this time and bringing you joy. Whether it’s reading, cooking, drawing, playing music etc.
— lucy rose (@lucyrosemusic) May 20, 2020
Every video I have received has made me smile so much, they are so heartwarming and together have made a video that’s really meaningful to me. Making it has brought me a lot of happiness and I hope for those who are in it and watch it feel the same too.https://t.co/XVf8vps3X1
— lucy rose (@lucyrosemusic) May 20, 2020
冒頭でいう「these songs」が何を指すのか、twitterを見てもこの文章がそのまま引かれているYouTubeの再生ページ概要欄を読んでも判然としないのだけれど、たぶん來る新アルバムみたいなものが念頭にあって出て来た言葉なのだろうか*1。実は、このヴィデオとほぼ同時期に、Lucy RoseのYouTube officialチャンネルから、「Question It All」(本曲) と「White Car」 の音源版が公開されていて、ジャケ写風の写真にはどちらにも「Question It All」とある。たぶん、このタイトルでアルバムが出るということになってはいるんだろう。YouTubeのオフィシャルチャンネル では、現在、この2曲、「Albums & Singles」のコーナーに、まとめてプレイリストとして公開されている。アルバムの制作途上を公開しているのか、ひょっとするとシングルとして公開しているのかは、ホントのところわかんない。とはいえ、そこいらへんは、追々明らかになるだろうし、気にしても大した意味はないかぁ\(^o^)/
というわけでそこいらへんはとりあえず措いて、説明を目にしてみると、あぁそういうのも、ほのぼのしたいいものかもね、という気にはなる。わかんないのは、時折挿入されるドラムを叩く、たぶんLucy Rose本人のネガ映像。どうしてまた本人をネガ映像にしなければならないのか。しかもギターとかぢゃなくてドラムス*2。とまた考えても仕方がないようなことを考え込んでしまったり。う~ん^^;
どうでもいいようなことばかり気にしちゃって、まぁどうしようもないですね\(^o^)/
その他基本情報へのリンク紹介は、「本日のSongs/Lucy Rose - No Words Left」 など参照されたし。
今のところ、アルバムとしては相変わらずこれが最新作ということになる。
*1:cf. DeepLによる日本語訳 。DeepLってこういう使い方もできるとは知らなんだ\(^o^)/。というわけで、ついでに本作の歌詞もDeepLの翻訳にかけてみた 。さすがに歌詞の翻訳は無謀だったかしらん\(^o^)/。
*2: 音源版の再生ページ概要欄を見ると、シンセサイザー・プログラミングとフレットレス・ベース以外はLucy Rose本人による演奏とのこと。別にギター以外のエレキギターだのキーボードだのパーカッションだのドラムスだのを奏でる映像であっていいはずだといえばいえる。でも普通ならこれまでの彼女の演奏スタイルからしてギターを選ぶんぢゃないかなぁとかなんとか。