カラスとエマルジョン
「カラスが石鹸を食べるというのは事実か。また、なぜ石鹸を食べるのか。」(レファレンス協同データベース) に、
カラスは油ものを好んで食べる性質があり、石鹸の油脂成分を目的にして食べたようである。
との記述あり。
そもそもカラスが石鹸を好んで喰らうとは知らなかったのだけれど、油脂成分のために喰らうというのはしかし本当なんだろうか? 単に油が目的だというのであれば、もちっとストレートにトンビよろしく油揚げでも狙ってみてはどうか、というような気がしなくもない。トンビは、タカ目タカ科、要するに猛禽類であるから、競合関係に置かれても敵いっこないということか*2。
しかしなぁ、石鹸から脂分を抜き去った後、カラスの消化器官の中でどうなってしまうのか。
石鹸を自作したことのある方ならわかるだろうけれど、石鹸って油脂分の素材と水酸化ナトリウムを混ぜて作るぢゃないですか。そういう石鹸から脂分を取っ払うと、消化器官の中に水酸化ナトリウムがうぢゃうぢゃ出来ちゃうように素人としては考えちゃう。カラスに限らず動物の消化器系についてはまったく知らないが*3、胃酸なんかはやはり強烈な酸だったりするわけで、そういうところに水酸化ナトリウムが顔を出したりするといろいろ思うわぬ化学的アレコレの面倒が生じたりしないのかしら。石鹸の消化はもうちょっと後の段階になっての話なのだろうか。あるいは、さらに素朴な話、石鹸で消化器官粘膜にまとわりついている粘液の類を洗い流したりすることになってしまいはしないのかしら。何にしてもあんなものを呑み込んでもロクナことはなさそうな気がする。
そんなこんな、考えてもまともな答えが出せそうもないことを頭の中で転がしているうちに思い出したことが一つ。
松原 始『カラスの教科書』(雷鳥社)に出ていたカラスはマヨラーであるという話のことだ。
カラスがなぜマヨネーズ好きなのかについての話が出ていたかどうかは覚えていないのだけれど、石鹸とマヨネーズなら、なんとなく関係ありそうぢゃないかしら、乳化つながりとか何とかで。石鹸は乳化させる側、マヨネーズは乳化の結果という違いはあるけれど。ひょっとするとカラスは鶏卵でも白身より乳化に役立つ黄身を好む、なんてことはないだろうか(ってもなぁ、黄身を好む理由のポイントが乳化にあるなんてどうやって確かめますかね)。あるいは、石鹸を腹に収めておいて、後から喰った油脂分とナニガシかの水溶成分を腹の中で乳化させて愉しむ食生活を送っていたりして……。
と、我ながらありそうにないなぁと思いながらもうだうだと考えてみたりするわけですね。いやはや。
カラス好きなら必携。そうでなくてもお薦め。記事中の引用は単行本のほうからだけれど。
*1: 「カラスが石鹸を食べるというのは事実か。また、なぜ石鹸を食べるのか。」(レファレンス協同データベース) で紹介されていたリンク経由。「カラス 石鹸」のキーワードで YouTube を検索してみると他にもそれなりの数のヴィデオがある。ちょいとびっくり。
*2: ほぼ間違いなく違うと思う^^;。
*3: といっても植物には消化器官なんてなさそうだけれど。