最近のブックマークから/《何を書くか》をどう考える?

 

 書き方だけでは不足がある、あるいは書き方以前に大切なことがあるというのは、たぶんたいていの人が気づいていることなんだと思いたいところ*2。実際、よく読むブログのことを思い浮かべて見るに、書き方のうまさだけで読み続けているものはそれほど多くない*3。自分の関心に応じて、つまり気になるサブジェクトを中心に選ぶほうが多いんじゃないか。

 そこいらへんは、所謂「書き方」、「文章術」の類では扱われない。でもそれが重要だというのは、入試の小論文やら学生さんが書かなきゃいけないレポートの類であっても同じことだ。たとえば、「Toulminモデルに準拠したレポートライティングのための協調学習環境」(Kyoto University Research Information Repository) なんかにもこんな話が登場する*4

 ただしToulmineモデルは、提案された主張の妥当性を高めるためのものであることには留意しなければならない。一般に主張はある問題に対してなされるわけだが、Toulmineモデルでは、主張や問題は所与のものとして扱われ、これらの評価は直接的には行われないことになる。つまり、このモデル自体には問題や主張についての評価を行う仕組みは組み込まれていないのである。

 しかし取り上げた問題がそもそも論じる価値のある問題なのか、主張が成立しうる問題なのかを判断することは、論証の妥当性を高めるのと同じくらい重要である。たとえば「学力低下について論じたい」というレベルの問題意識しかない場合に、ここから主張を導くことは困難である。初年次生の場合にはこのレベルの問題意識が出発点となることが多いことを考えれば、このことは重大な問題となる。

「Toulminモデルに準拠したレポートライティングのための協調学習環境」『京都大学高等教育研究第13号』2007年、p.16

 Toulmineモデルは、最近の論理的な文章を書くお作法としてかなり有名になってきたもの。簡略版である「三角ロジック」なら耳目にした人も多いんじゃないかしら。引用元にも簡潔な説明が出ている。知らなかった人は読んでみるといい。

 ここで考えてみたいのは、書き方以上に何を書くかが重要だとして、では書くべき話題をどう鍛えるかということだ。とくに、読み手をとにかくかき集めることが狙いなんじゃなくて、もう少し主体的に書くことに臨んでいる場合、これは結構重要な課題になるはず。実はそこがあやふやであるために紛糾している文章って多いように思える。つまり《「学力低下について論じたい」というレベルの問題意識しかない場合》みたいなヤツだ。

 そのへん、学生のレポート論文指導関連の文献にはヒントになる記述が多い。書く目的には今自分が書こうとしているものと違いはあっても、参考になるところは多いはず。読んでみて損はないんじゃないかなぁ。たとえブログの日常雑感+αみたいな場合だって、結構考えることが出てくると思う。話題の絞り込み、多様な観点からの検討、調べるべき事柄の発見……少なくとも書いてみたいことを書く前に何を考え直さなければならないのかについてのヒントはたくさん得られるんじゃないかなぁ。

 

論文の教室—レポートから卒論まで (NHKブックス)
Amazon bookmark with Amab.jp on 09.05.13
おすすめ度の平均: 4.5
5 学生が見えているんだなぁ
2 不要な要素を多分に含む。
4 これはマックファンが書いた論文執筆指南書だ!

 

*1:【復旧時註】一応このURLでも問題なく移転先のはてなブログにたどり着くはずだ。万が一辿れなかった場合は、「読まれる記事を書くために、文章技術よりもはるかに有効なこと」(分裂勘違い君劇場 by ふろむだ)hatebuを利用してみられたし。

*2: もちろん、物事には例外は常にあって、大学入試小論文の入門者・初心者さんの質問と来たら、「どうやって書いたらいいですか?」みたいな書き方系のものが多い。実際のところ、書き方だけでどうにかなると思っているってことは、たぶん実際の問題を解いたことは愚か読んだことさえないんだろうなってあたりがバレちゃってるぞぉ。

*3: とはいえ、僕の場合はそれなりにあったりする。自分の主義主張とはなーも関係なく、ときにはそれはどーよ、と思いながらも愉しんでしまうブログさんって、数えてみると両手に余るくらいある。たとえば、コトリコ先生こと山下泰平のブログその他などはその筆頭格かな。でも、そういうことって、はてブのコメントなど見てみると、例外的な読み方になっているんぢゃないかなと思う。

*4: 今回のサブジェクトとは少々離れたところの話題がメインの論文だけど。でも、ブログを活用したピア学習っぽいやり方なんかの話も出てきてすんごく興味深い。