「大阪の人は電車の中で、平気で子供に小便をさせる人種である」(谷崎潤一郎)
たまたまなのだけれど、
大阪の人は電車の中で、平気で子供に小便をさせる人種である、——と、かう云つたらば東京人は驚くだらうが、此れは嘘でも何でもない。事實私はさう云ふ光景を二度も見てゐる。尤も市内電車ではなく、二度とも阪急電車であつたが、此の阪急が大阪附近の電車の中で一番客種がいいと云ふに至つては、更に吃驚せざるを得ない。
という一節を「谷崎潤一郎の神戸を歩く」(東京紅團) というページで見つけた。《谷崎潤一郎が大正14年の文藝春秋「阪神見聞録」で大阪の人について書い》たものなのだそうな。
なるほど、と思ったのは、「本日の重要問題/堺の公衆トイレ」で書いた、東京での僕の散歩圏と堺の観光地界隈の公衆トイレの数の懸隔のこと。東京では、大震災や大空襲の結果として、公衆トイレの用地確保が容易になった可能性をあげた上で、
近代以降にかぎってみれば堺を直撃した震災はなかった。しかし、1945(昭和20)年には3月13日から8月10日にかけて5次にわたる大空襲を経験している。聞くところによれば、単位人口あたりの投下焼夷弾数では大阪市内を上回っていたともいう。そういう条件を考えれば、東京同様戦後復興にあたって公衆トイレをも視野に収めた都市計画があっても良かったはずだ。まして、堺は戦前にはリゾート地として栄えていたのだし、観光地的な観点からそこいらへんが度外視されていいはずはなかったのではないかとも思える。
ってなことを書いたのだけれど、なるほど、立ち小便どころか電車内での放尿すら許すような風土があったとすれば、観光地だろうがなんだろうが、公衆トイレの設置など課題としてはまったく考えられなかったというようなことだってありそうな話だと思えて来る。うーん。
「『アーバンリゾート』大浜のにぎわい」というタイトルのある堺市立中央図書館のページにある図版、アーバンリゾートはいいのだけれど、しかし、昔は賑わっていたらしい大浜や浜寺の海水浴場*2の衛生状態が俄然気になり始める話でもありますですねぇぃ。今さらそんなことを気にしても何の意味もないですけれどぉ/(^o^)\。うーん。
参考文献、みたいな
- 芥川龍之介「谷崎潤一郎氏」(青空文庫)
瞬時に読める短いヤツ、普通に見れば随筆の類ということになるんだろうか、ちょいとばかりの厭味な感じがクスリと笑いを誘う芥川の言葉の芸でもってうまくまとめられていて、これはまぁもうフィクションとして読まれていいようなものですね。谷崎を扱いつつ、この「話」のなさ加減のあからさまなヤツを書いたのはやっぱり……とか余計なことを考えたり考えなかったり。って、これ、いつ書かれたのかしら?
- 芥川龍之介「谷崎潤一郎氏」(えあ草紙)
- 芥川龍之介「谷崎潤一郎氏」(Kindle版、無料)
谷崎潤一郎: 没後五十年、文学の奇蹟 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)
- 作者: 河出書房新社編集部
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/02/26
- メディア: ムック
- この商品を含むブログ (2件) を見る
そっか、もう没後50年なのか。全集をはじめ、関連書籍やその文庫など、年頭からいろいろ出始めているみたい。しっかしなぁ、TPP交渉なんぞはめでたく破綻して、全作品青空文庫入りを果たしてくれんもんかなぁ。
*1:「『アーバンリゾート』大浜のにぎわい」(堺市立図書館) より拝借。
*2: そういえば、谷崎も「細君譲渡事件」直後、一時浜寺界隈に居た時期があったりしたはずだけれど、海水浴場を利用したことはあったのだろうかしら?