本日の重要問題/堺の公衆トイレ

 大矢 復こと福禄寿超人のツイート、こういう主題に関しては本州から足を踏み出したことのない僕には当たり外れの判断のしようがないけれど、足下においても思い当たるフシはいくつもある。でもパッと思い当たる節らへん、退屈なお話にしかなりっこないので止めておいて、堺の公衆トイレの話を改めてまた。本家「与太」が読めない状態だと情報が広く共有されないしなぁということで。福禄寿超人のツイートと関係が薄くなってしまうが、それでもおもてなしのあり方にかかわらないでもないというあたり、連想クイズ脳的にはちゃんとつながっているので、まぁいいではないですか\(^o^)/。

 

 堺の公衆トイレの数がいかに少ないかは本家「与太」で何度となく触れてきたけれど、今でもやっぱり状況に変わりはない。亀戸時代の散歩圏と堺の観光地域をだいたい同じ縮尺で比べてみると、これは一目瞭然なのだ。以前に本家で取り上げたトイレマップをもう一度示しておく。凡例等は示さないが地図中の記号が何をあらわしているのかは大雑把なところ問題なく伝わるだろう。

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東京下町での僕の散歩圏

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堺の代表的観光地域

 初めてご覧になる方ならあんまりの懸隔に愕然とされるのではないか。僕だって何度見ても愕然とするもんね。あんまりの懸隔に、中には眉に唾する方もいらっしゃるかもしれない。しかし、本日はすでに4月1日ではない。怪しまれる方がいらしたらば、ぜひご自身の目で「トイレマップ(toilet map)大阪府エリア」 はてなブックマーク - トイレマップ(toilet map)大阪府エリア「トイレマップ(toilet map)東京都エリア01/03」 はてなブックマーク - トイレマップ(toilet map)東京都エリア01/03「トイレマップ(toilet map)東京都エリア02/03」 はてなブックマーク - トイレマップ(toilet map)東京都エリア02/03「トイレマップ(toilet map)東京都エリア03/03」 はてなブックマーク - トイレマップ(toilet map)東京都エリア03/03をご覧になられるがよろしい。僕の散歩圏は「02/03」のにあるが、散歩圏だけに例外的に公衆トイレが集中しているというわけではないことも他のマップに当たられることで御理解いただけると思う。東京でも地域によって多少の粗密はあるし、上の画像の縮尺についても目分量でいじっているから多少の違いや不正確はあるかもしれないが、それでもせいぜい誤差の範囲、極端で恣意的な操作をした結果上のような懸隔があらわれたわけではないのだということもご了解いただけるだろう*1

 

 先月20日には「さかい利晶の杜」 はてなブックマーク - さかい利晶の杜がオープンして、堺だって現在観光に力を入れているということなんだろう。けれど、観光客は団体ツアーで手洗いもよく勘案したコースをたどるヒトたちばかりではない。独り旅あり仲間内だけのグループ旅行あり、行き当たりばったりを愉しむことだってあるだろう。堺市内は23区内と比べるとコンビニだって少ないけれど、そのコンビニだってすべてトイレの利用が可能だとはかぎらない。気兼ねしつつ駆け込んだコンビニでトイレが利用できなかったときの絶望感と来たら、日常的なあれこれのプチ絶望感の内では抜きん出てデカいものぢゃないか。愉しみにしていたはずの堺観光であっても、そこいらへんで不愉快を味わえば厭ぁな思い出として訪問者の心に残ることになる。なかなかリピーター様になってくれるヒトは増えないということになりはしないか。つまりは、観光を重視するつもりであるならば「おもてなし」の欠如として看過できない問題ではないか。

 というかまぁ、観光がどうこう以前に、堺市内を歩くヒトすべてにとって公衆トイレは多くあるに越したことはないんぢゃないかと思うなぁ。

 

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 それはそれでごもっともなのだけれど、というかまぁ、神社でなくったって日本では全国的に立ち小便は法的に禁じられていることは存じておりますがな、と堪えつつ街中を彷徨い歩き、その揚句出会うのが、

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というような具合だと、ホントにツラいと思いません?

 用地確保一つとっても簡単に解決出来る問題ではないとは思うのだけれど、何とかしないとまずい問題だと思うなぁ。うーん。

 

 これもすでに本家「与太」で取り上げた話だけれど、東京の公衆トイレの充実も一朝一夕に出来上がったものではないみたいだ。

 今日の警察の規則では道路に放尿すべからずと戒めて居る。而して此広い東京の市中に便所らしい辻便所は殆んどないといつてもよい。而かも日進月歩の教育は、吾人に教ゆるに極端に我慢をすると膀胱が破裂する危険があることを以てする。而して先輩は偶々此警察禁令を犯すものあるを見て、今日の青年には忍耐力がない、我々の若い時は三日も四日も小便を堪へたやうな事を云ふ。彼等の青年時代には路傍の放尿は法の禁ずる所ではなかつた。今日衛生上の考から之を以て法禁とする以上、彼等先輩は先づ沢山の辻便所を作る事に骨を折らねばならない。時代の変遷に応ずる各般の施設を怠つて昔通りの激励鞭撻を加ふるのみでは、更に最新の教育によつて自我の意識の段々に発達して居る今日の青年は承知しない。先輩諸君の常に敬服して居る独逸などでは二三丁置きに、中で弁当を開いて喰べてもよい程の立派の辻便所を拵へ、而かも尚特に夜間に限り、車道に向つて放尿するものは之を大目に見るといふ習慣がある。之れ丈けの念の入つた手続を尽した上で、初めて放尿の禁を説くべきである。斯くても其禁を犯すものあれば、其自制力の乏しきを罵るべきである。我国に果して之れ丈けの設備があるか。設備なくして法の励行の苛察に亘るの甚だしきは、夜場末の暗がりで止むを得ず放尿しても厳しく法に問はるゝもの少からざるを見ても分る。

吉野作造「蘇峰先生の『大正の青年と帝国の前途』を読む」(青空文庫) はてなブックマーク - 蘇峰先生の『大正の青年と帝国の前途』を読む、ルビ省略、強調引用者

 これがいつ書かれたものなのか正確には知らない。でも『大正の青年と帝国の前途』は、1914(大正3)年に出版されているから、それからさほど間のないうちに書かれたものだと想像される。何にしても、吉野作造を信用するかぎり、かつては東京にもロクに公衆トイレはなかったのだ。あれだけの数の公衆トイレを作るには細かな用地確保が不可欠になる。でも、それはなかなか簡単なことではないだろう。たぶん、震災後か大空襲後に大きな判断が行われて、公衆トイレを大量に作り得たということか。いずれかからの復興に当たってそれなりにしっかりとした都市計画が作られた結果なのだと素人の当てずっぽうなどしてみるのだけれど、実際のところ、どうなんだろう。

 近代以降にかぎってみれば堺を直撃した震災はなかった。しかし、1945(昭和20)年には3月13日から8月10日にかけて5次にわたる大空襲を経験している。聞くところによれば、単位人口あたりの投下焼夷弾数では大阪市内を上回っていたともいう*2。そういう条件を考えれば、東京同様戦後復興にあたって公衆トイレをも視野に収めた都市計画があっても良かったはずだ。まして、堺は戦前にはリゾート地として栄えていたのだし、観光地的な観点からそこいらへんが度外視されていいはずはなかったのではないかとも思える。

 っと、さしあたりそのへんのことを愚痴っても仕方がない。何にしても21世紀の今日只今、観光地としても生きてゆくつもりであるならば、何とかしたほうがいいに決っていることなんぢゃないかぁ。都市の個性は様々あっていい。なんでもかでも東京の物真似をしているようぢゃぁ未来はむしろない。動く金の規模がデカいぶん東京に圧倒的な分があるもん。同じような街ならデラックスな東京のほうにヒトは流れちゃうだけだ。ヘタな物真似はよしたほうがいい。でも、公衆トイレは人類の普遍的な必要に応じるモノであることは疑いようのない事実なんだからして、このへんは東京に学んでもバチは当たらないと思うなぁ。

 

トイレのチカラ―トイレ改革で社会を変える

トイレのチカラ―トイレ改革で社会を変える

 
心に響く空間―深呼吸するトイレ

心に響く空間―深呼吸するトイレ

 

 どちらも興味深い本らしいのだけれど、未だお目もじ叶わない。アマゾンで注文すべきかとも思うのだけれど、未だ春のやって来ない懐具合とお値段具合を考えると、内容、多少なりとも確認してみたいところ。うーん。公衆トイレの充実の次でもいいから、立ち読みのできる大規模書店も堺に欲しいものである\(^o^)/。

*1: ただし、ここで引いたマップは昨年のもの。ひょっとすると多少の増減はあるかも。また、トイレマップの成り立ちそのものについての情報は未確認。だからデータそのもののたしかさは不明である。歩いてみた実感の範囲では大きな誤りはないように思いはするのだけれど。というか、堺の公衆トイレが実感として少ないので、ググってみたらば実感を裏付けてくれる都合のいいデータが出て来たというところ。そこいらへん、場合によっては(たとえば有志がトイレの場所を書き込むといった形で成立しているというような場合)、堺にはもう少しくらい公衆トイレが多い可能性はある。しかし、その場合であっても上図2つの地域を実際に歩き回ってみるかぎり、罷り間違っても堺のほうが公衆トイレがわずかにでも多いなんぞということはあり得ないだろう。

*2: 詳細未確認。なお、空襲を受けたのは、現在の堺の中心部。とどのつまりは、概ね上のマップにあがっている地域になるかしら。現在の堺の大部分は空襲を受けていない。でもって、いよいよ公衆トイレは見当たらない\(^o^)/