愛おしい文字とか固有名詞とか

 冒頭のものは「旧仮名」ではなくて変体仮名。今風に書けば「ふじえ」さんの「ふ」。書けば今風に書けてしまうのだけれど、書いてしまうと「fujie」の音がなんとなく微妙にまろやかさを失ってしまったかのような。

 ちゃんと印刷できた印刷屋さん、エラいぢゃないか。って、住民基本台帳では当たり前に今も使われるものとして扱われているのか。へぇ〜。

 そういう綴りを持つ女性がつい今まで生きておられたのだなぁ、と思ったら、なんかちょっとグッと来るものがあった。言葉、就中なかんづく固有名詞から、思わぬ奇妙な形で心を揺さぶられることがある。固有名詞が指し示す人物ではなく、あくまでも固有名詞によって揺すぶられるのだ。どういう心理なんだか見当もつかないのだけれど。

 タイプは違うけれど、「ちゃんどらぐぷた」とか「やりつあほき」とか、不思議な音をちょっと舌先に転がして味わい直したりする。舌頭に千転せよ、とは芭蕉先生だったかしら。いや、名前の味わい方についてのアレぢゃないけれど*1

 

 今朝は、「国字刻んだ土器出土 常陸太田・瑞龍遺跡」(茨城新聞、YouTube)hatebuなんてニュースもあった。見つかった国字、男女のまぐあいを表すものだったとか。「見」の逆位でつながったものが何とかかんとか。ちょっとそこいらへんよくわかんないんだが、文字の69みたいなもんか。それぢゃ変態漢字、みたいな、ってなことは今の世では云わないだろうけれど。

 

 あぁ、それにしても、標準から外れたものの愛おしさみたいなもんってあるよなぁ、なんかしら。

 

変体仮名とその覚え方
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 板倉聖宣きよのぶってこんな本も書いてはったんか。知らんかった。

 

*1: やっぱり書いておいたほうがいいかな。これは句をとことん推敲なさいってことを謂うものとされてまっす。でも、推敲において舌頭に転せとは、音をよく吟味するというプロセスを必ず通さなきゃ駄目ってことでもあるでしょ。というようなアレでここでは使ったって感じです。いい加減なアレでごめんなさい。別に名前を推敲してやろうとか考えてるわけぢゃありまっせん。