カーク・ダグラスと田中春男

 未明、小松方正*4に追い駆けられる夢を見た。

 『東京暮色』に出て来る浦辺粂子*5がやっているような呑み屋のカウンターに並んで*6、当初、話は和やかに弾んでいたような気がする。カーク・ダグラスって実は田中春男に似てますよね、似てるかなぁ、似てる似てる、そっくりだよ、人種を超えた兄弟だ、どうして一方は二枚目で一方は三枚目になってしまうのか、そこが人類の不条理だというべきだな……。どちらがどの言葉を語っていたのかは判然としないのだけれど、それでも僕の夢の中の会話にしてはずいぶん筋の追いやすい具合に和気藹々わきあいあいと話は進んでいたはずなのだ。

 それがどういうタイミングでだか、話の進み具合が怪しくなって、君は私を馬鹿にしているだろう? と小松方正が語り始める。あぁ、これはいけないな。初めて話すヒトに僕はそういうふうな態度を採っているように見られることがある。こういう誤解はアルコールが入っている場合、なかなか解き難いものだ。とんでもない、そんなことはありません、と一応は云ってみたのだが、それが馬鹿にするということだよ!、と彼は突然席を蹴って立ち上がりこちらを()めつける。

 それから何があったのか詳細は覚えていないのだが、JR五反田駅西口側の商店街を駅方面に走って僕は逃げている。居酒屋ではすぐ隣に腰掛けていたのにいつの間にか彼を50メートルは引き離していただろうか、けれど、夢の中の例によっていくら躰をジタバタ動かしても、思うようには前進できない。おいこら、逃げるな、との声が段々大きくなってくる。突然、歩道の正面に玉川伊佐男*7が現れ、なんと両手を広げて立ちふさがっているではないか。これは絶体絶命のピンチ! どいて下さい、どいて下さい、お願いします! と声を上げたところで目が覚めた。

 

 カーク・ダグラスが先日亡くなったけれど、考えてみれば田中春男の亡くなったのも2月だった。カーク・ダグラスのほうが4つ下だが、20年少々長生きしたことになるのか。

人のよく死ぬ二月また來たりけり

また一人ふえし二月の佛かな

 なんとなく思い出す久保田万太郎

 

立ち読み課題図書、その他

小津安二郎大全

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  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
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芦川いづみ 愁いを含んで、ほのかに甘く

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  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
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完全な真空 (河出文庫)

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 文庫になってたのか。

夢十夜 (岩波現代文庫)

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 近藤ようこモノだもの。

ポール・サイモン the life  ソングライティングと人生(仮)

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 3月13日。買わずばなるまいが、寒風吹きすさぶ懐には優しくないお値段ざんす。

 

*1: 恥を忍んで告白しておくと、これを見るまで「ピロー・ショット」が枕詞由来の英語だとはまぁったく知らなかった\(^o^)//【2020年4月19日】いや、ひょっとして蓮實重彦『監督 小津安二郎』(筑摩書房)にも出ていたような気もするぞ\(^o^)/

*2:cf. google:高橋とよ

*3:cf. google:田中春男

*4:cf. google:小松方正

*5:cf. google:浦辺粂子

*6:【2月12日補註】今になって思い出したのだけれど、『東京暮色』の居酒屋では笠智衆田中春男が並んで登場するシーンがあったのだった\(^o^)/。こういう場面が夢に現れたのも、たぶん、そのへんへの無意識の連想が働いていたんだな。

*7:cf. google:玉川伊佐男。関係ないが、JR五反田駅東口側から高輪白金方面に向かう歩道でなら、80年代後半か90年代初め頃、実際に玉川伊佐男と何度かすれ違ったことがある。/いや、よくよく考え直してみると、90年代には、すでにあの界隈を引き払っていたはずだから、80年代半ばから終わり頃だな、すれ違ったことがある時期は。