迷ってばかり

20100102151805

2009.12.29. 駒込〜田端

 駒込から見知らぬ道をたどって田端までの途上。建物の取り壊しの風景など、今時珍しいものではないといえばない。でも、両隣はしっかり通常の暮らしを持続しているこの狭さでの取り壊し、ごちゃごちゃしつつもそれなりに落ち着いた下町の風景の中で出会うと、ずいぶん唐突に見えていささかならずギョッとする。鉄筋コンクリートの、小さくはあってもそれなりの結構を持った建物が壊されているのを見ると、壊されず改築され転用されながら生き残る看板建築みたいなものが、心細くも一層愛おしいものに感じられてくる。

 

 以下、2010年初夢の記録。あまり多くは覚えていないのだけれど、見た夢の最後の部分。この部分の直前にも、曰く云い難いぼんやりとした雰囲気の記憶は残っている。いつもと同じようにヒトのざわつく気配はあるのだけれど、見渡す限りだれも見当たらない閑散とした遊園地かどこかにいたのだと思う。そこからどこをどう移動したのかは例によって覚えていない。突然、場面が変わっただけかもしれない。

 ゴミ屋敷のゴミを撤去した跡のような荒廃した屋内。屋内といっても、視野の右斜め上はぽっかり大きな穴があいていて、うっすらと朱に染まった曇天が見える。穴の輪郭部分には、ススキやらヨモギやら長短不揃いの雑草、赤土も露出している。屋内というより洞窟か何かだったのかもしれない*1。壁もそういえば乾いた土が露出しているままになっていたか。目の前には、クリーム色の金属製ラックに並べられた譜面とLP、CDの類。縦横入り乱れて雑然としている*2。一辺が30cmほど、濁った朱や紺のインクで洗剤の名前なんかが印刷された立方体のダンボールに、ラックから譜面と録音盤を選んではかなり乱暴に放り込んでいく*3。何か近々非常に破壊力の大きな兵器がこのあたりに投下されるという話*4。しかし、いつどこでだれにそんな話を聞かされたのかはわからない。避難に際して、持ち出せるものの量は限られている。公に規制されていて、それを守らなければならないのだ。その正確な数が思い出せない。しかし構うものか、持ち出せるだけのものは持ち出してやるぞ。咎められたら、そのときはそのときのことだ。***や****はもう文化財のようなものなのだからな。持ち出すのはむしろ義務なのだ。いや本当にそうなのか、ずいぶん手前勝手な自己正当化を図っているだけではないのか。そんなことはない、こいつらを手に入れるにはそもそもずいぶん苦労したのだ。いやしかし、どうやって手に入れたんだっけ?

 後ろから早くしろ、早くしろと急かす声が聞こえる。放って措いてくれ。姿は見えないがあれはT.Y.の声だろう。しかし、作業はなかなか進まない。ダンボール箱に放り込んだはずのCD類がいつの間にかラックに戻っていたり、譜面が箱の外、うっすらと黄土色の土の粉をかぶったコンクリートの床に落ちていたりで、また改めて箱の中に押し込めなければならないからだ。お前たちをこのまま無に帰してしまいたくはないんだ、なぜそれがわからない*5。そう語りかけたわけでもないのに、そう思うたびに譜面や録音盤たちが、ぼぉぉうっと大型客船の汽笛のような低い音を立てる。それが何のメッセージなのかわからない。いやそもそもメッセージなのかどうか? そう思うと苛々が募り、作業はますます捗らない。後ろからの早くしろ、早くしろという声が高まり、大きな穴からの光が徐々に赤みを増すおかげで、時間的余裕がなくなっていることがひしひしと伝わってくる。これはいかんぞ、これはいかんぞ、と何か声を上げようとし……

 で、目が覚めた。初夢に限らず僕の見る夢は、毎度どうしてこうも不能感に満ちた終わり方ばかりなのだろう。切迫感はどうも手洗いにいかねばならぬというキッキんの事態があってのことだったみたいだが(^_^;。このラストに至るまでには、いろいろ断片的には快適な思いも抱けるあれこれもあったような気がするのだけれど、そいつはウッスラとした雰囲気としてしか記憶にない。

 

超人ロック 完全版 (37) 神童 (King Legend)

超人ロック 完全版 (37) 神童 (King Legend)

 

 『超人ロック』はちゃんと改めて読み直してみたいのだけれど、いろんな版が出回っていて、さてどれを選ぶべきなのか迷っちゃうよなぁ。あと、「超人」が"Superman"になっちゃうのって、どうも違和感を覚えずにはいられない。あれは、スタジョンの『人間以上』*6の原題、"More than human"あたりのほうが、合うんぢゃないかしら。まぁ、英語のネイティヴさんに通じる話かどうかはわからんちんだけれど。

 あ、何でいきなり「超人ロック」なのかは、脚注のどれだかを参照のこと。

 

 夢の中の色、これは見ないヒトもいらっしゃるらしいが、僕の場合、かなりはっきりと記憶に残っている。もちろん、記憶の中で無意識の裡に夢の内容の解釈が進んでしまった結果、色を「見ている」ことだってあるんだろう。けれど、主観的にはかなり微妙な色彩のグラデーションだって夢の中で「見ている」。大昔のブルーフィルムみたいにパートカラーになっちゃってることもあるけれど、それでもこれを現実の体験と同様に綴ることには何のためらいも覚えない*7

 しかし、僕の場合問題になるのは夢の中の音だ。おそらくは、眠っている最中、外で実際に鳴っている音が何らかの解釈を経て夢の中で多少の変形を受けながら響くのだと覚しい音もある。しかし、たしかに手持ちの語彙で手っ取り早く書くなら「音」だとしかいいようがないのだが、それが現実的な音とはかなり隔たりのあるものだと思えるものが遥かに多い。今回の初夢での「大型客船の汽笛のような低い音」なんかもそうだ。たしかに「音」だと感じられるのだけれど、具体的な音量が感じられないのだ。そんなふうに夢の中では、音量はあっても音圧がない、メロディであるはずなのに具体的な音の高低が感じられないといったふうに、場面場面によって性格は異なるのだけれど、かなり抽象的観念的な音が鳴り響いている。そういうものをうつつの言葉で「音」として書いてしまうことには相当のためらいを覚える。これまで 「象牙の門から」カテゴリー で書いてきた中でも、音色も音程も音量もないけれど主観的には「音」、でもそう書くとイクラなんでもおかしいよなぁということで「振動」としてしまったケースもある。しかし、たいていの場合は、音量がない、音圧がない、高低がない云々を逐一記すのでは書くのにも読むのにも煩雑なだけだろうし、それ以外にどんな言葉を当てればいいのか見当もつかない、ということで、少々嘘臭くても「音」という言葉を使う。

 でもなぁ、それにしてもあの「音」は一体どういうもんなんだろうな。

 そんな具合に、「知覚」の細部においてだって相当に奇妙な「体験」になっているのが夢なのだ。言葉はそこいらへんの記述用には作られていないからして、どうにもこうにも夢の記述は嘘々しいものになっちゃうんだよなぁ。うーん。

 しかし、一方で言葉っちゅーもんはいかにうつつの言葉であってもそれ自身は観念的なもんにすぎんのだからして、同じく観念的体験である夢を、もちっとうまい具合に綴らせてくれたって良さそうなもんだがなぁと云えば云えてしまうような気がしないでもないんだがぁ。そこは僕の言葉の扱いの下手っぴぃということで話が済んでしまうかもなぁ\(^O^)/。うーん。

 他の方のブログなど見ていると、とても現実的な、しばしば寓話的といっても良さそうな夢をみている方がいらっしゃる。本当にそんな夢を見ていらっしゃるのだろうか? あ、もちろん「夢」と称して寓話を語りたいだけなんだって方がいらっしゃることはわかるんだけれど、そういう変にブッたのは措いての話。それとも、ヒト様が読むと僕の夢なんかも実は寓話的に読めてしまったりするんだろうか?

 まぁ、僕なんかが考えたって何も始まらん話だよな。やれやれ。

 

夢に迷う脳――夜ごと心はどこへ行く?

夢に迷う脳――夜ごと心はどこへ行く?

 

夢研究の第一人者が、夢見る脳のメカニズムに迫る。「夢は精神錯乱に似ているということではない。精神疾患そのものなのだ」という驚くべき指摘は、脳と夢に対する私たちの見方を根底からくつがえす。私たちのもっとも身近な病(夢)の大胆な考察。

 いっそそう云ってくれたほうが、僕の見る夢にはピッタリ来るような\(^o^)/

 

*1: というよりも、夢の中の空間に現実的定義をあてはめて考えようとするのがそもそもの間違いなのだろう。

*2: 今にして思うと、ラックは学習院下に暮らしていた折、今はもうなくなってしまった「とんとん亭」というラーメン屋のNさんにいただいたものだな、たぶん。ん? でもあれは、エメラルドグリーンだったんぢゃなかったっけか。/Nさん、今どこで何をやってらっしゃるのだろう。

*3: 放り込みながら、ラックの塗装のハゲた部分のサビが気になって、あぁ後で落としておかなくては、なんぞと呑気なことを思い浮かべてもいたのだった。以降記されるような事情があるのであれば、そのような「後」などないはずなんだけどぉ(^_^;。

*4: 夢の中では名称もはっきりしていたように思う。マンガ的な名前、たぶん「超人ロック」とか「未来少年コナン」とかに出てきたヤツなんぢゃないだろうか。「ジェノサイド」がどうとか何とか聞いたような気もするから、「ロック」のほうかなぁ。何かもうちと文学的香り漂う兵器の名前であるとかっちょいいんだがぁ(^_^;。いやしかし、文学の香り漂う武器ってどんなのがあるってんだ?

*5: 他にも何やらわけのわからないことを思い浮かべていたはずなのだけれど、今はもう思い出せない。

*6: そういやぁ書店で『人間以上』、見かけんなぁと、アマゾンで検索してみたら、今はマーケットプレイスものしかないのね。あぁいう子ども向けって感じのSFでも、古典なんだから、ちゃんと出し続けないとSFファンは絶滅の一途をたどることになるんぢゃないかなぁ。SFファンの入り口作品として重要なもんだと思うんだがなぁ。うーん。

*7: ホント云うと、こういうほうがおかしいんぢゃないかという気がしないでもない。夢なんちゅーのは完全に観念の出来事体験なんだから、もっと現実に見ない変な色とかが出てきたっておかしくないはずなんだよな。そういうあたり、次の段落で書いている夢の中の「音」のほうが僕の場合、素直な夢の見方をしてるんぢゃないか、と思わないでもないのだ。色があるが彩度が感じられないとか、明度が感じられないとかそういう色を見たっていい……、と書いてみるとそんな色の「見方」を感じた夢もあったのような気がしてきた(^_^;。