本日の教えて君/何で「ボレロ」の著作権保護期間は、2016年5月1日に消滅したの?

 こういうこともこれからは自由に出来るというわけですね。

 

 「クラシック音楽の人気曲『ボレロ』、1日に著作権消滅」(AFPBB News) はてなブックマーク - クラシック音楽の人気曲「ボレロ」、1日に著作権消滅 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News、あれっ? と思ったのでちょいとだけ調べてみたことをφ(..)メモメモ。

「あれっ?」と思った疑問は次の2点。

  1. こんな中途半端な時期ぢゃなくて大晦日で切れるんぢゃなかったっけか?
  2. ラヴェルってもう死後70年経ってたよねぇ?

 第1のは、青空文庫収録範囲が元日から拡大することでももう知られていることかな。というわけで、とくに言を要さないよなぁ。

 第2点。「モーリス・ラヴェル」(Wikipedia) はてなブックマーク - モーリス・ラヴェル - Wikipediaによれば、ラヴェルの生没年は1875年3月7日 - 1937年12月28日ってことになっている。コトバンクで引いても、日付は書かれていないけれど年には間違いがないみたい。したがって、普通に考えれば、著作権保護期間を70年としている国に合わせても、2007年からラヴェル作品はパブリック・ドメインになっていていいはず*1

 

フランス独特の戦後加算によるものっぽいようなんだけれど、よくわかんない

 で、ググってちょろっと調べものゴッコした結果を以下に。

 フランスは第一次世界大戦第二次世界大戦戦勝国であるが、戦時中は著作物の適正な利用が不可能との立法者の判断に依拠して、第一次世界大戦後に「1919年法」によって戦時加算をしており、さらに、第二次世界大戦後にも「1951年法」によって公有に帰属していないすべての著作物に8年120日延長の戦時加算をしている。

フランスの戦時加算 「戦時加算 (著作権法)」(Wikipedia) はてなブックマーク - 戦時加算 (著作権法) - Wikipedia*2

 大の月を考えると「120日」というのがアレだけれど、大雑把に4ヶ月と考えると計算が合わないでもない。《戦時中は著作物の適正な利用が不可能》だからという考え方に基づく戦時加算なんて全然知らなかった。自分がそうだからというのはアレだけれど、でもたぶん、少なくとも日本ではご存知ない方は多いんぢゃないかなぁ*3。ただ、これはあくまでもおフランスの国内法での話だから、おフランス以外の国に効力が及ぶわけぢゃないでしょ? でも、だとすると……

 ラベルの全作品の著作権収入は総額4億ユーロ(約490億円)超で、このうちボレロによるものは1960年以降で5000万ユーロ(約61億円)前後と推計されている。著作権が消滅して「パブリックドメイン」になると著作権使用料は発生しなくなる。

 仏音楽著作権管理団体SACEMのローラン・プティジラール(Laurent Petitgirard)氏は、世界全体でみると10分ごとにどこかでボレロの演奏が始まるとよく言われるが、今後この曲は広告や映画でいっそう多く使われるようになるだろうと述べた。

「クラシック音楽の人気曲『ボレロ』、1日に著作権消滅」(AFPBB News) はてなブックマーク - クラシック音楽の人気曲「ボレロ」、1日に著作権消滅 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

という記事の結びがよくわからない。この5月1日をもって全世界的に著作権が消滅したとしか読めないよねぇ、こういう書き方ぢゃぁ。著作権保護期間が作者の死後50年の、日本のような国では、一般的な戦時加算期間を加えたとしてもすでに、死後70年の国でだって8年と120日前にパブリック・ドメインになっていたけれど、本国おフランスに限って独自の戦時加算のおかげで今日初めてラヴェル作品がパブリック・ドメイン入りしたということぢゃないのかなぁ。もちろん、その結果、今日初めて全世界どこででもパブリック・ドメイン入りしたのだと云って間違いだってわけぢゃないけれど、なら、記事の冒頭あたりに《おフランス独特の戦時加算期間を過ぎた結果》とか何とかの一言があっていいんぢゃないか。それとも、そもそもAFPはおフランスの通信社だから、世界と云えばおフランスのことに決っているってなもんで、上みたような記事の結びになっちゃったんだろうか。それはそれでありそうな話のような気がして来なくもないんだけれど……。うーん。

 もし、何か特殊な規約があって、全世界的にラヴェル作品が今日まで保護されて来続けていたのなら、ぜひとも知りたいところ。ご存知の方、もしいらしたら、やさしく教えてやってくださいましm(_ _)m。

 

【復旧時註】この件に関しては、「ラヴェルのボレロと戦時加算」(PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2))hatebuがうちよりていねいに調べて書いていらっしゃる。関心がおありの方は必読かと。

 

ファム・ファタール(サントラ)

ファム・ファタール(サントラ)

 

 冒頭の「Bolerish」はデ・パルマ監督の無理矢理の注文であぁいう作品になったのだけれど、ラヴェル何とかという著作権管理団体さんか何かから訴えられそうになったとかなんとか。どういう理由で訴えられずに済んだのかは知らない。

 それにしてもAmazon.co.jpの価格、無闇に高いですねぇぃ。これならマケプレもののDVDを手に入れたほうがお得かしら。

*1: 日本では、音楽の著作権保護期間が作者の死後50年のまんまだったと思うから、すでに20世紀中にパブリック・ドメイン扱いになっているはず。間違ってたら教えてちょ。

*2: 脚註省略。

*3: 戦時加算といえば、まず思い至るのは日本とドイツ、イタリアに課せられた面倒ってのがまずいの一番に思い浮かぶヤツぢゃないですかぁ。そちらは、ラヴェル作品の場合、10年くらい前に切れているはずだから、日本ではフランス独特の戦時加算を加えても問題にならないと思うんだけれど。