本日の備忘録/「ノーベル文学賞は外国人に」の件

 我がTLでは、馬鹿にされ扱き下ろされまくっていた

との見出し、たしかに「日本チャチャチャ」自意識剥き出しと見えてしまうシロモノ、みっともないものではあったし、実際のところ、

てなふうに「外国人」*1からさえからかわれる始末*2。まぁ結果としてはどうしようもない速報記事ということになっちゃったのだけれど……。

 別に共同通信を弁護するわけではないのだけれど、この見出しは、日本人の自意識過剰みたいな傾向と、少なくとも周囲が考えるほどには強い結びつきを持っていないのではないか。

 

 そもそも共同通信サイトの記事には、新聞記事と同じような読者によって読まれることを想定していないものも多い。まずそのことを確認しておこう。

 2015年1月7日付エントリ「本日の埋草/世の中のことはよくわからない」 hatena bookmarkで取り上げた共同通信の見出し及び記事本文をここでも取り上げてみる。

 今現在となっては、この見出し、ばかりではなく記事本文を読んで、何のことかすんなり理解できるのかどうか。まず大抵の人類にとっては謎でしかないんぢゃないか。でも、これで「ニュース詳細」なんですぜぃ\(^o^)/

 しかし、こういう記事が公にされているということは、これを理解できるヒトたちの存在が想定されているということである(はず)。ならば、こういう記事のユーザとして想定されているのが僕たち一般人ではないから僕たちには理解できないのだと考えるのが合理的ぢゃないだろうか。記事が扱っているサブジェクトが見出しと記事本文の文言からパッと理解できるヒト……要するに通信社による速報の本来のユーザである他の報道メディア関係者が想定されているというわけだ。彼らなら、話題になりそうな時事に通暁しており、情報の断片でしかない見出しと記事からでも、扱われているサブジェクトが何であるか機転を利かせて理解できる(だろう)。

 この記事の場合ならば、マクドナルドのチキンゲットへの異物混入という事態*3を追っている他のメディアの編集者などがターゲットとなるユーザなら、共同通信の他の断片的な記事と合わせ読んで何のことかの見当は容易につけられるだろうという見込みの下に書かれ、公開されたということなのだろう。

 

 今回のノーベル文学賞記事の件も、そのへんの事情を考えてみるといい。

 すぐ後に「ノーベル文学賞トカルチュクさん ハントケさんも」(共同通信) hatena bookmarkという見出しの記事が書かれていて、少なくとも共同通信としては、先の「外国人」記事がそれだけで完結した記事になっているとは考えていなかったってことだろう。あれは、とりあえずの速報だったのだ*4。たぶん。

 共同通信 hatena bookmarkページを比較的頻繁に利用するユーザならわかると思うのだけれど、こうした事態はまったく珍しくない。同じサブジェクトについて複数の記事が公開されたり、一つの記事が次々と更新され記事内容や見出しが変化していったりするのは常のことだ。

 今回の「外国人」見出し記事についても同じように考えられるだろう。あれはあくまでも最初の速報、断片的な情報の一部として記事になったのであって、あれが独立した記事として受け止められることなど想定されていないのだ。だから、通常の新聞記事のように読んで、日本人の自意識過剰を表しちゃっているとストレートに受け止めるのは、少なくとも共同通信社の意図から隔たりが遠い受け止め方だということになる。

 このへん、@kinokuniyanetさん hatena bookmarkが概ねわかりやすい説明をツイートしておられるので、そいつを挙げておく。

  要するに*5、お得意様ユーザの記事制作過程の都合を考えた結果があの見出しなのであり、見出しの意味内容のみを以て共同通信社が日本人の自意識過剰みたいなものに囚われていると見るのは早合点なのだ、と見たほうが現実に近いということになる(みたいだ)。

 もちろん、こうしたことは、新聞社などの報道機関のサイトはもとより、他の通信社、時事通信とかAFPとかReutersとかのサイトではなかなか見られないものではある。だから、たまにしか共同通信サイトを覗かないヒトにはわかりっこない。僕だって2015年1月頃は、そういう見当を持っていなかったから、あぁいうエントリを書いたわけだ。

 だからもし、共同通信が、たとえば「『ノーベル賞は日本人ではありませんでした』報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも『日本スゴイ』に回収」(LITERA/リテラ) hatena bookmarkみたいな記事に代表される批判を減らしたい、あるいは外国の通信社特派員みたいなヒトからからかわれたくないと考えるなら、共同通信サイトに掲げられる記事の性格について説明したページを設けて、各記事のフッタからリンクでもしておくといいんぢゃないか。ちょっぴり面倒臭いかもしれないけれど、たぶんあるんぢゃないかと思われる電話とかメイルとかによる抗議への応対よりはラクチンだと思うんだがなぁ。そうでもないんですかね?

 

 本件とは関係ない思いつきなんだけれど、ボブ・ディラン文学賞を受賞するくらいなんだから、ひょっとして宮﨑 駿が村上春樹より早く日本人受賞者になる可能性なんちゅうものもありそうな気がするのだけれど、どうかしらね?

 

 ハントケが脚本を書いている。ヴェンダースの映画、バックの選曲も良くてなかなか。

 

共同通信ニュース予定2020
一般社団法人共同通信社編集局予定センター
共同通信社

 12月2日発売予定。しかしこれもパッと見、中身の想像がつきにくいタイトルだと思いません? なんだか共同通信社アカシック・レコード*6みたいなタイトルぢゃないですか^^;。

 

*1: おまけにただの「外国人」さんぢゃない。アカウントページのプロフィールによれば、「Japan bureau chief at Reuters」とある。あっと驚く、同業他社の外国人さんぢゃないですかぁ\(^o^)/。

*2: このツイートに続くスレッドも興味深いので、関心がおありの方は、お読みになられたし。

*3:cf. google:マクドナルド チキンナゲット 異物混入 2015、検索結果トップのいくつかを読んだ上でなら、上の記事がその異物混入が発生した地域についてのものであることもまぁわかるんぢゃないかしら。/改めて確かめてみたら、こりゃそれでもわからんかもって感じ\(^o^)/。

*4:【2019年10月13日】後になって見つけたのだが「外国人」見出し以降の共同通信記事については、「Re:大手マスコミよりスラドの方がレベルが高いだなんて (#3699929)」(「2018年のノーベル文学賞はオルガ・トカルチュク氏、2019年のノーベル文学賞はペーター・ハントケ氏が受賞」(スラド)) hatena bookmarkが簡単なまとめになっていて、概要を把握するのに好都合になっている。

*5:【2019年10月26日註】元々は関連スレッドも表示できていたのだけれど、@kinokuniyanetさんの一時凍結復活後、現在のような表示になっちゃった。ひょっとすると表示も復活するかもしれないのでしばらく現状のままにしておくつもり。詳細をさっさとお知りになりたい場合は、twitterでの表示を利用されたし。

*6:cf. google:アカシック・レコード