本日の備忘録/降霊術2.0、その後

 ディープフェイク*1のことや降霊術2.0のこと*2を思い浮かばせる話。

動画に映っているのは、いずれも夫やパートナーに殺害された女性たちです。

これは、イスラエルで実施されている、虐待から身を守る方法を知らせるキャンペーンで、イスラエルのスタートアップ企業が、生前の女性たちの写真を元に、AI=人工知能の技術を使って制作しました。

イスラエルでは今年、家庭内暴力に関する相談の電話が、去年より10%増加しています。

動画の中で声なき声を上げる女性は、嫉妬深い男性と付き合っていて、身の危険を感じた時は周りに助けを求めるよう警告しています。

AIで死者がよみがえる イスラエル企業が被害者女性の動画制作(2021年11月26日) - テレ東BIZ、YouTube、概要欄

 技術的にはディープフェイクの洗練されたもの、死者に語らせるという意味では降霊術2.0的なものというところか。ただし、死者生前の考え方や語り口を学習させた上で発言させるといったものではなさそうだ。

 技術的には目覚ましい革新といったふうには見えないけれど、使い方としては社会的にインパクトのありそうなものだろう。犯罪の被害者に語らせるといった使い方が進めば、たとえば殺人罪の容疑者の取り調べに被害者を当たらせたり、服役中の殺人犯に毎朝(毎夜)被害者との対話を課したりといった、かなり悪趣味な用途だって追々出て来そうだ。そこいらへんは容疑者や服役者のメンタルヘルスに関わるからホイホイとそうなるとは思わないけれど、フィジカルな暴力による拷問の代わりに用いられたり、死刑を免れた服役者への被害者遺族の憎悪が消えない場合の無期懲役+αとして使われないという保証はないかも。

 ホラー映画ネタにならホイホイ出来ちゃうかな?

 

 京劇についてはトンと知らないので「名優・梅蘭芳」といわれても全然ピンと来ないのだが、YouTubeで検索すると*3、関連動画がゾロゾロ出て来る。さぞかし「名優」だったということなのだろう。

 中国の京劇の名優が、情報技術とAI技術を駆使して現代によみがえった。北京理工大学光電学院の翁冬冬(おう・とうとう)研究員は、昨年、中央戯劇学院と共同で公益科学研究プロジェクトを立ち上げ、リアルタイムに会話できる「京劇デジタルヒューマン」を作ったと述べた。

 翁氏は「梅蘭芳の写真を大量に集めて肖像彫刻を制作し、それを高精度レーザースキャナーで読み取ることで、梅蘭芳の基本的な顔の構造を把握することができた」と語る。

 彫刻では肌や髪の毛、目などの細かい特徴を具体的に表すことができなかったため、研究チームは梅蘭芳に顔立ちの似た人物を探し出して、顔のデータを収集。基本的な表情を捉えることで、顔を忠実に再現することができたという。

 中央戯劇学院伝統戯劇デジタル化高精尖(高精度)研究センターの宋震(そう・しん)主任によると、梅蘭芳の当時の衣装を再現するため、チームは膨大な文献を調べ、北京市内の仕立屋を何軒も回り、ついにデジタル衣装を完成させた。

 翁氏は「将来的には、現実と想像を融合させた没入型インタラクティブの『デジタル梅蘭芳」』のキャラクターシーンアプリケーションを作りたい。視聴者がVRゴーグルを装着すれば、梅蘭芳の京劇を楽しんだり、梅蘭芳とリアルタイムで会話したりすることができるようにして、科学技術の普及や教育支援などを促進したい」と説明した。

 翁氏はまた、「科学技術と中国の優れた伝統文化を融合することで、文化は時空を超え、国を超えることができる。しかし、この研究は容易ではなく、プロジェクトが進むにつれ、責任の重さを痛感している」と語った。

京劇の名優・梅蘭芳、AIでよみがえる 北京市 - Xinhua Japanese、YouTube、概要欄

 複数の写真から3Dデータを起こすのかと思いきや、わざわざ実際の頭部の立体を作るという手間をかけているところが意外。そういう作業を経たほうが(感覚的な?)顔の構造把握に有益だというのは、心にとまる指摘かも。ただし、本人を知らない者がいうのも何だけれど、今ひとつCGアニメ風の感触が消えていないみたい。この感触、やはりAIを使って美空ひばりを蘇らせようというプロジェクトの動画を眺めたときのそれに似ている*4美空ひばりのほうが歌を歌っているぶん勝っているように思えなくもないけれど、声が結構不自然だし、歌っているというのに躰の動きにノリがないようにも見える。動きが足りないのは、AI梅蘭芳も同じことか。

 リアルタイムに可能だという対話がどの程度のものかが気になるところだが、そのへんは未だ吹かしに留まるところか。考えてみるに「降霊術2.0」認定が可能だとすると、死者生前の考え方・語り口・振舞いの学習は不可欠ってところになりそうだなぁ。

 

 と、備忘録なのだから、さしておもしろい結論が出て来るわけではないのであった\(^o^)/

 

立ち読み課題図書、その他

 「本日の備忘録/反5W1H」の時分には全然気づいていなかった。選句具合などどんなものなのだろう。

 

 これも気づいていなかった。いかんなぁ。

 俳句方面はめちゃくちゃ疎くて、今どんなものが書かれ読まれているのか全然知らないのだけれど、お若い論者と覚しい方がこういう本をお出しになっていらっしゃるということは、久保田万太郎の俳句って結構お若い方にも読まれ続けているということなんだな。へぇ~。

 

 日本の中世とドイツ哲学ってなんか相性がいいんですかね。坂部 恵『仮面の解釈学』(東京大学出版会)*5のことをぼんやりと思い起こしたり*6

 

*1:cf. 「本日の備忘録/ディープフェイクとか」

*2:cf. 「本日の備忘録/降霊術2.0」「本日の備忘録/降霊術2.0、もう半ば以上(?)実現できちゃってるのね\(^o^)/」

*3:cf. 「梅蘭芳」でのYouTube検索結果

*4:cf. 「[NHKスペシャル] AIでよみがえる美空ひばり | 新曲 あれから」(NHK、YouTube)。他サイトでの埋め込み再生不可になっているので、仕方なくリンクのみ。

*5: 今検索して初めて新装版が出ていることを知った。へぇ~、さっすが名著ってことなのか。

*6: たぶん、当然のこととして話の扱いはずいぶん違うんでしょうけれども。