本日の備忘録/草尾事件

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草尾、かつての溜池の取水口付近

 そういう事件って今でもあるものなのか。

5日夜遅く、大阪府堺市の住宅で、見知らぬ男が勝手に食事しているのを、この家に住む男性が見つけた。男は男性らに取り押さえられると意識を失い、その後、死亡した。

警察によると、午後11時ごろ、堺市東区草尾の住宅で、この家に住む60歳の男性が、水を飲みに台所に行ったところ、見知らぬ男が椅子に座って、冷凍食品のパスタなどを食べているのに出くわした。男は、この家にあったTシャツを勝手に着ていて、男性が話しかけると「玄関から入ってきた」などと答え、逃げようとして暴れたため、同居する男性の父親が110番通報。男性と隣に住む弟が一緒に、男を取り押さえたという。警察官が駆けつけると、取り押さえられた男は、意識を失っていて約1時間後、搬送先の病院で死亡した。

男は所持品などから、大阪府内に住む30代とみられ、警察は身元の確認を進めるとともに、詳しい状況を調べている。

「見知らぬ男 勝手に食事 取り押さえ後死亡」(読売テレビニュース)

 堺市東区草尾といえば、散歩圏内にある草尾のことだ。南海の路線バスがまだあたりを走っていた頃、虹が丘から、鶴道、草尾、福町まで、母の買い物に連れられてバスの窓外に眺めた草尾でもある。昔はちょっとした溜池がバス停近くにあって、夏になると布袋葵の腐臭が開け放たれた車窓から車内に、あっという間に広がったのを覚えている。「草尾くさお」という音が「臭い」という語の連想を呼び、「草尾」を耳目にするとまず「くさい+お」という音が頭音として響き、あの悪臭が今でも鼻孔に蘇ってくる。

 冒頭に挙げたのが、そのかつての溜池。現在ではほとんど埋め立てられて、画面左に見えるとおり中古車売り場ができていたりする。いつ頃こうなったのかは知らない。けれど、子どもに注意を促す看板が残っているのを見ると、ベラボウに以前だということはなさそうだ。

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草尾

 溜池はほとんど消えてなくなり、埋め残された部分にだって全然水が残っていないのだから、イラストのような意味での「あぶない」事象は生じ得ない。もちろん、埋め残された部分に滑落して怪我をする程度の危うさは残るのだろうから、このあたりで派手には遊ばないほうがいいといえばいいかもしれない^^;。

 草尾も界隈同様江戸期に新田開発が行われた地域だ*1。だから一帯には溜池や井戸跡が目につく。調べたことはないのだけれど、写真の溜池もたぶん新田開発時分からのものだろう。溜池一つのことを地域全体に敷衍していいわけはないと思いつつも、そういうずいぶん長く続いていたものが、比較的最近になって消えつつある場所なのだとまとめたくなってくる。そういう、唐突な変化が起こっているのだと考えるとき……。

 なんだか話の筋が怪しくなってきてしまった。元に戻す。

 

 見慣れぬ不審者が夜中に自分のうちの台所で勝手に飯を喰っていたなどという珍事出来ちんじしゅったい。大昔ならば、不審者のなりにもよるだろうけれど、案外妖怪か何かの類に話は化けたりしたんぢゃないか。夜行やぎょうさん*2か何かの派生ヴァージョンのような。噂が口承文学と踵を接していたに違いない時代には、話をおもしろおかしく仕立て上げる芸も重宝されて、窃盗未遂が夜行さんの親戚筋に化けるといったことはあってもおかしくないような気もする。と、いうような連想の飛ばし方は、不審者が亡くなってしまった以上、不謹慎なだけだということになってしまうか。

 喰い物に事欠き、取り押さえられて(簡単に?)亡くなってしまうとなると、今なら新型コロナ感染症のことを心配したくなるところ。流行の影響で失職し飢えた結果なのか、感染したが療養中の支援も不充分で心身とも弱っていたところを押した結果なのか。けれど、記事に書かれた事柄からの想像としては、いずれも妄想過多の余計なお世話というところだな。

 何にせよ要するに、だ、己の散歩圏内でずいぶん奇妙な事件が起きたものだから、ずいぶん驚きましたとさ。というあたりに話は落ち着く。

 何一つとして、めでたしめでたしとはならないのだけれど。

 

立ち読み課題図書、その他

少なからぬ数の現代音楽は、以前ならばマニアックな音源を入手しなければ耳にすることが難しかった。しかしインターネットにおける「YouTube」や「Naxos Music Library」(有料)などの登場は、状況を劇的に変化させた。本書で言及する作品も、今やその多くはこうしたサイトで触れることが可能である(ただし日本語の作曲者名やタイトルでは検索に引っかからないものも多い)。気になった作品は、ぜひ音を確かめていただきたい。

本書「はじめに」末尾

とは真にその通りなのだけれど、ならば人物名であれ作品名であれ、読者サービスということで初出箇所では原綴も記されていていいんぢゃないか。もちろん、人名であれ作品名であれ、カタカナ日本語表記でもウィキpその他を当たれば原綴も知れるわけだけれど、面倒臭い。おまけに、たとえば「メシアン」で取り上げたQuatuor pour la fin du temps Quartet for the Endなんかの場合、本書に記された「時の終わりのための四重奏曲」よりも「世の終わりのための四重奏曲」が一般的な日本語表記だったりするような翻訳の違いの問題その他日本語表記の揺れの問題もないわけではない*3

 原綴、書いておいてくれるとありがたいのになぁ、と思う折は、しかしまぁ本書に限らずあるよなぁ。

 

Blue Heron Suite

Blue Heron Suite

  • 発売日: 2021/05/07
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 新譜かな。メロディ等多少自己模倣的なところが耳についたかな、という気もするけれど、全体にいい感じなのはもう揺るがない。昨年の『World On The Ground』*4めでたくグラミー賞ベスト・アメリカーナ・アルバム賞を獲得して*5、調子づいているところ。聴いて名前を心に深くとどめておいてバチは当たらない。

 本人チャンネルのプレイリスト、『Blue Heron Suite』(Sarah Jarosz、YouTube)で試聴できる。

 

*1: google:"草尾新田" 

*2: google:夜行さん

*3: たいていの場合、とくに有名な作家、各品の場合なら、ググれば揺れ幅の中にありそうな候補も上がるし、それらからの見当もつくにはついちゃうけれど。

*4:cf. 「本日のSong/Sarah Jarosz - Johnny」 

*5:cf. 「Sarah Jarosz Wins Best Americana Album | 2021 GRAMMY Awards Show Acceptance Speech」(Recording Academy/GRAMMYs、YouTube)これでもういくつ目のグラミーだっけか?